ジャンプがマガジンに負けた日…

「週刊少年マガジン」が、王者「ジャンプ」を倒した日の話

少年週刊誌の中でトップをひた走る「週刊少年ジャンプ」。しかし過去には「マガジン」が王者「ジャンプ」を倒し、少年誌のトップに君臨した時代がありました。

「マガジン」黄金時代の到来

1994(平成6)年の年末、「少年ジャンプ」は日本の雑誌史上最大部数となる653万部を記録しました。

五十嵐隆夫編集長率いる「マガジン」もヒット作を連発して急速に部数を伸ばしており、「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」の3誌を合わせれば、発行部数は軽く1000万部を超えていました。

この当時、JR山手線に乗れば、ひとつの車両の中だけで「ジャンプ」や「マガジン」を読んでいる人を何人も見かけたものです。

プレイステーションが発売されるのはこの年の12月。

まだ誰もがパソコンを持っている時代ではなく、インターネットも普及していませんでした。

携帯電話を持っている人も少なく、まして小学生や中学生が持つなど考えられなかった時代です。

マンガこそがエンターテインメントの中心となるメディアだったのです。

すでにバブルが弾けて数年経っていましたが、マンガ誌業界に限っては全盛期と呼んでもいい時代でしょう。

発行部数がピークに達した94年を過ぎると、「ジャンプ」は下り坂に向かいます。

この年に『幽☆遊☆白書』、翌95年に『DRAGON BALL』、96年に『SLAM DUNK』と人気作品の終了が重なり、猛追する「マガジン」との差がぐんぐんと詰まっていきました。

後に第2次黄金時代と呼ばれる90年代の「マガジン」について、「コマがそろっていたんですよ」と、当時「マガジン」の編集者だった樹林伸は説明します。

「20本あまりの連載中、3~4本しか読むものがなかったら、なかなか雑誌は買ってもらえない。五十嵐(編集長)さんは『読まれていない作品の数を減らす』ことを心がけていました」

『はじめの一歩』『風のシルフィード』『カメレオン』『シュート! 』『特攻の拓』『将太の寿司』『金田一少年の事件簿』――。

ヤンキーマンガの印象が強い90年代の「マガジン」も、こうして並べてみるとバラエティに富んだ連載陣だったことがわかります。

そして、「金田一」に続く大ヒット作となる『GTO』(藤沢とおる)が始まった1997(平成9)年、ついに「マガジン」は長年の悲願を達成するのです。

王者「ジャンプ」を倒した日

7月28日、朝日新聞夕刊の一面にこんな大見出しが載りました。

「王者『少年ジャンプ』失速 『マガジン』と部数ならぶ 24年間の首位陰る」――。

夕刊とはいえ、全国紙のトップ記事です。

新聞がマンガを「悪書」として叩いていた50年代には、とても考えられないことでしょう。

やがて、“その日”がやって来ました。

11月1日発売の「ジャンプ」407万部に対し、同5日に発売された「マガジン」97年49号は415万部。

今度は毎日新聞が11月15日の夕刊一面で「少年マガジン王者復活」と大々的に報じたのです。

翌98年、「マガジン」は史上最大部数となる445万部を発行。

少年誌トップの座を守ったまま21世紀を迎えることになります。

勤続12年、「マガジン」一筋で副編集長になっていた樹林が講談社を退社したのは99年のことです。

「妻には95年頃から『会社を辞める』と伝えていたんです。とはいえ、編集者として『自分の雑誌が日本一になる瞬間』を見届けたかった――。一生に一度、あるかないかの体験ですからね」

八面六臂の活躍

フリーの原作者(兼・編集者)となった樹林は、多くのペンネームを使い分けながら、古巣の「マガジン」を中心に八面六臂の活躍を続けています。

たとえば2012(平成24)年初頭には、「少年マガジン」に『エリアの騎士』『ブラッディ・マンデイ ラストシーズン』『探偵犬シャードック』の3本、「ヤングマガジン」に『サイコメトラー』、「モーニング」に『神の雫』、と講談社のマンガ誌だけで“5本の週刊連載”を抱えていました。

恐るべき仕事量です。

仕事の場は講談社だけに留まらず、小学館の「ビッグコミックスピリッツ」に連載を持ったこともあります。

「ジャンプ」のような専属契約に縛られているわけでもありません。

フリーランサーとしては当然のことでしょう。

しかし、「マガジン」のライバルである「サンデー」や「ジャンプ」では、一度も仕事をしていません。

「ジャンプの優れたマンガ家と仕事をしたいという気持ちはずっと持っています。でも、できない――。少なくとも、五十嵐さんの目の黒いうちはできませんよ」

7つの名を持つ原作者・樹林伸は最後にそう言うと、穏やかな微笑を見せました。

ネットの声

「子どもの頃の話しですが、つまらないと思う作品も必ず読む派でした。連載終了するとちょっと嬉しかったりしましたね。今考えると、作家さんには申し訳ないです。

自分には面白くはない作品が長く続くと、こういうのが面白いと思う人もいるのかと、不思議に思ってました。どこが面白いのか考えてみたりも。何か振り返ると、そこで学んだこともあるのかな。」

「そんな歴史的なこともあったのですね…。
今の週刊少年マガジンは酷い。くだらないラブコメや今どき有り得もしない少しエッチな恋愛ものの連載ばかり。同じ絵や内容の漫画しか描けない能無しベテラン作家の再連載や長期連載ばかり。もう少しジャンプのように社会現象となりような新人作家の発掘に力を入れて、少年誌が今の時代どのような内容の漫画が求められているかを真剣に考えて欲しい。ジャンプの人気至上主義の考え方をもう少し導入すべき。連載作家や連載作品を決める担当者を一新して、ジャンプから金を積んで引き抜いて勉強すべき。このままではこの先二度とジャンプを超えるような日は来ないでしょう。」

「20本あまりの連載中、3~4本しか読むものがなかったら、なかなか雑誌は買ってもらえない。
今のマガジンがまさにその状態。
企画先行なのはいいが、比較的人気のあるマンガ以外は、複数のタイプの女の子を出して軽く脱がして…的なステレオタイプな恋愛マンガばかり。今の2次元美少女ブームで当たればアニメだゲームだグッズだを編集は狙っているんだろうが、凡庸すぎてつまらない。
空手、不良、ファンタジー、野球、サッカー、必ず入れなきゃいけないと、偏った判断で作家に描かせているような作品は面白くなる訳ないし。
王道と言えば聞こえはいいが、未知の可能性を潰している雑誌の作りだよね。」

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