牛乳不健康説があるけど…日本人にはホントはどうなの??

牛乳不健康論争「日本人は消化できない」「カルシウム排出」説の真偽

昨年末には大々的に消費キャンペーンが行われた「牛乳」。

「完全栄養食」と位置付けられることがある一方、逆に「牛乳を飲むと不健康になる」との説もあります。

日本人は牛乳を消化できない…

牛乳の栄養価の高さを疑う余地はありません。

カルシウムやタンパク質にミネラルといった栄養素を豊富に含みます。

ただし、飲み過ぎるとカロリー過多やカルシウムの過剰摂取で結石ができやすいといった不具合が起こることも考えられます。

完全栄養食とは言えませんが、適量を摂る分には体に悪いものではないでしょう。

栄養学の面から「牛乳不健康説」を検証してみます。

まず「日本人は牛乳を消化できない」という説についてはどう考えればいいのでしょうか。

牛乳に含まれる糖分である『乳糖』を分解できない症状を『乳糖不耐症』と言います。

それが原因でお腹を壊したり、下痢を引き起こすことがあります。

実際に「お腹を壊すから牛乳が嫌い」という声は少なくありません。

そのため、「そもそも日本人の体には合わない」といった極端な主張もあるのです。

欧米人と比べて日本人には一定数の乳糖不耐症の人がいることは確かです。

しかし、“日本人は”とひとくくりにするのは言い過ぎかもしれません。

もし腹を下しやすいようなら、乳酸菌の発酵によって乳糖を分解してあるヨーグルトを摂ると、乳糖不耐症が生じにくいそう。

牛乳とカルシウムの関係

「牛乳を飲むとカルシウムが排出されて、骨粗しょう症になる」という説も近年、注目を集めました。

カルシウムが豊富なはずの牛乳を飲むことで、逆に骨がスカスカになるという「カルシウムパラドックス」を引き起こすというのです。

論拠の一つとして挙げられるのが、牛乳に含まれるミネラルの一種であるリンの存在。

リンは体内から排出される際にカルシウムを伴うため、「いくら牛乳を飲んでもリンがカルシウムを体外に排出してしまい、カルシウム不足で骨粗しょう症になる」というわけです。

カルシウムとリンは相性がよく、体内で結びついて排出されるのは事実です。

しかし、牛乳に含まれるリンはわずかな量に過ぎません。

体内に蓄積されずに排出されるのはさらにわずかな量であり、牛乳単体で骨粗しょう症を引き起こすとは考えにくいのです。

つまり、牛乳に含まれるリンを気にして不安がる必要はないでしょう。

むしろ、牛乳よりもはるかに多くのリンを含む加工食品のリスクに注意すべきです。

毒ではないが万能薬でもない

不健康説には、「牛乳のタンパク質が胃や腸の中で固まり、胃腸が悪くなる」というものもあります。

牛乳に含まれるタンパク質の8割を占めるのが「カゼイン」です。

「カゼイン不耐症」とも言いますが、腸で固まったタンパク質カゼインが腸の炎症などを引き起こし、さらには花粉症やアトピーといったアレルギー反応、またはがんの原因になることもあるとされます。

この説の真偽はどうでしょうか。

腸を傷つけたり炎症を引き起こす可能性は、タンパク質全般に言えます。

カゼインに限らずタンパク質には、ある程度のリスクがあります。

ただし、それは摂り過ぎた場合に限ります。

タンパク質の吸収過程で腸などに余計な負担がかかるのです。

つまり、“カゼインだから危険”というわけではありません。

1日で何リットルも摂取しなければ問題はないでしょう。

それでは、「牛乳は身体の成長と健康を促進する完全栄養食である」という言説については、どう捉えればいいのでしょうか。

「牛乳に含まれる栄養を過大評価するのもよくない」とされています。

よく『牛乳を飲むと背が伸びる』と言われますが、身長は遺伝の影響が大きく、牛乳を何リットル飲めば何センチ伸びるというものではありません。

また昭和の時代には『牛乳は健康に良く、万病に効く』と言われたこともありましたが、その頃は全国的にカルシウム源が不足している時代でした。

特に戦後の貧しい時期に米ばかり食べていた日本人にはカルシウムが豊富な牛乳は貴重な栄養源になり、健康状態を改善したとも考えられます。

万病を防ぐほどの効果はなくとも、栄養不足から生じる病気には一定の効果をもたらしたはずです。

牛乳は毒ではありませんが、万能薬とも言えないわけですね。



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