MotoGP…日本メーカーが最速最強ではなくなった

もはや日本メーカーは目標にあらず…ドゥカティ、KTM、アプリリアの欧州勢が躍進するMotoGPの新勢力図

3月6日、2022年のMotoGP開幕戦カタールGP決勝がルサイル・インターナショナル・サーキットで開催され、ドゥカティのサテライトチーム、グレッシーニ・レーシングのエネア・バスティアニーニが優勝しました。

2位にKTMのブラッド・ビンダー、3位にホンダのポル・エスパルガロ、4位にアプリリアのアレイシ・エスパルガロと、トップ4にヨーロッパメーカー3社が入るという結果に。

過去2年、怪我とリハビリで苦しいシーズンを過ごした絶対王者のホンダのマルク・マルケスは5位。

一昨年のチャンピオンで昨年総合3位につけたスズキのジョアン・ミルは6位。

そして昨年のチャンピオンでカタールで行われた第2戦ドーハGPで優勝したヤマハのファビオ・クアルタラロは9位と苦戦。

そして今季の大本命にあげられているドゥカティワークスの二人、フランチェスコ・バニャイアは転倒、ジャック・ミラーはメカニカルトラブルでともにリタイア。

両車ともレース序盤からエンジンの加速に問題を抱え、追い上げも出来ず、本来の力を発揮することができませんでした。

優勝タイムがドゥカティの進化の凄さを物語る

ドゥカティワークスは、昨年もカタール大会で優勝を逃していますが、その後はマシンが熟成。

シーズン後半戦は圧倒的な強さを発揮しました。

その最終型21年型「デスモセディチGP21」に乗るバスティアニーニはマシンの真価をしっかりと発揮。

優勝タイムは、去年の大会を制したビニャーレスのレースタイムを約15秒短縮したのです。

さらに、19年に優勝したドゥカティの優勝タイム(20年のカタールGPはコロナ禍の影響でMotoGPクラスがキャンセルとなった)より約23秒速く、ドゥカティの進化の凄さを物語るものでした。

ドゥカティワークスは、この数年、実にさまざまなアイデアを投入して、MotoGPクラスのマシン作りの先頭に立ってきました。

特に18年以降、ドゥカティがライバルをリードしてきたのが、スタート時や走行時に車高を下げるシステムで、他メーカーも追随して開発競争となっています。

ドゥカティワークスは22年シーズンに向け、マレーシア・セパン、インドネシア・マンダリカで行われた公式テストでさらなるプラスアルファを求めて、さまざまなアイデアにトライ。

それを開幕戦カタールGPでも継続したが、先にも書いた通り、問題が発生して結果を残すことが出来ませんでした。

しかし、バスティアニーニが優勝した速いベースマシンがあるだけに、第2戦インドネシアGP以降、すぐに開幕戦のミスをリカバリーするのは間違いないでしょう。

過去2年、ドゥカティはコンストラクターズタイトルを獲得するも、ライダーズタイトルは逃しています。

今年は成長著しいバニャイアのタイトル獲得が期待されており、バニャイアはシーズン開幕前に、早くも来季以降の契約更改にサイン。

チャンピオン獲得に集中する環境を作ったのです。

開幕戦はまさかの転倒リタイアでしたが、今季は史上最多の21戦という長丁場。

ドゥカティは今季4チーム8台体制。

ワークスチームがだめでも、こうしてサテライトチームが勝つところに層の厚さを感じさせますし、ドゥカティの強さにブレはありません。

ドゥカティの最新型「デスモセディチGP22」のこれからの熟成が注目されます。

あっという間にトップチームの仲間入りしたKTM

それに続いたKTMも大幅に進化。

2位になったビンダーは、昨年ドーハGPで8位だった自身のタイムを約15秒短縮(去年は開幕2連戦という変則スケジュール)。

そのビンダーとしばらくバトルを繰り広げたマルク・マルケスは、「KTMは加速が良かった」とエンジンの進化を高く評価していました。

コロナ禍の中で、21年は20年と同じエンジンとする特別措置が取られたのですが、マルケスのコメントからも、その間に地道に行ってきたKTMの開発が結果につながったことを感じさせます。

MotoGPに参戦して6年目のKTMは、開発スピードを上げるために、ライバルメーカーなどから積極的に技術者をヘッドハンティングしてきました。

その効果もあって、あっという間にトップチームの仲間入りを果たしたのです。

KTMのマシン作りはドゥカティとは対照的で保守的なものですが、最高峰クラスの戦いを知り尽くしているプロの集団という印象。

マシンのパフォーマンスが上がれば、おのずとライダー獲得競争でもレベルは上がります。

オーストリアのバイクメーカーが、オーストリアのレッドブルをメインスポンサーに世界の頂点を虎視眈々と狙っているのですが、近い将来のタイトル獲得が現実味を増してきました。

アプリリアの進化も目を見張るものがあります。

15年にMotoGPクラスに復帰したアプリリアは、昨年まではイタリアのグレッシーニ・レーシングにチーム運営を委託してきたのですが、今年から完全なワークスチームになりました。

ワークスチームを復活させるために、アプリリアもKTM同様、2輪、4輪メーカーから多くの技術者をヘッドハンティングしたといわれていますが、結果を残せないチームに与えられるシーズン中のエンジン開発禁止除外やテスト日数制限除外などの特別ルールを最大限活かし、ワークスチーム復活1年目からライバルメーカーも注目する大きな進化を見せているのです。

アプリリアは2ストロークエンジン時代は、日本のバイクメーカーと戦い、その後、スーパーバイク世界選手権では何度もタイトルを獲得。

MotoGPではこれまで大きな成果を上げていませんが、これからの活躍が注目されます。

2ストローク時代は日本のメーカーがライバルでしたが、いまは同じイタリアのドゥカティが最大のライバルでもあり目標となったのです。

MotoGPクラスでイタリアメーカーのライバル関係が生まれるのは初めてのことですが、それがますます開発に拍車をかけることになりそうです。

日本のメーカーはこれまで「勝って当然」だったが……

こうしてヨーロッパメーカーの躍進ばかりが目立つのですが、ホンダのエスパルガロが、昨年のドーハGPで13位になった自身のタイムを約15秒短縮して3位になりました。

チームメートで5位になったマルケスが、「ポルを始め、トップグループが予想より速かった。自分はフロントタイヤのフィーリングに課題があり5位完走を目指した」と語るも、マルケス自身も、19年大会でし烈な優勝争いを繰り広げて2位になったときのタイムを約19秒も短縮し、マシンの進化を感じさせました。

しかし、ヨーロッパメーカーの躍進の陰に隠れた形です。

スズキは、昨年ドーハGPで4位だったアレックス・リンスのタイムを、今年6位のミルが約8秒短縮しましたが、トップ4が約15秒の進化を見せているだけに、やや物足りない結果に。

昨年のドーハGPで優勝したヤマハのクアルタラロに至っては、レースタイムをわずか0.256秒短縮しただけ。

タイヤのパフォーマンスを生かせなかったなど、他の理由もあるのでしょうが、低迷が際立ちました。

日本のメーカーにとっては、これまでは「勝って当然」の戦いが続いてきましたが、これからはそうも言っていられないような状況です。

ヨーロッパのメーカーにとっては「日本のメーカーに勝つことが最大のPR」になった時代から、これからは「1番になる戦い」があたりまえになってきました。

史上最多の21戦が開催される2022年シーズン。

今年の戦いを占うのはちょっと早い気もしますが、開幕戦カタールGPは、今年のヨーロッパメーカーの躍進を強烈に感じさせるものでした。

第2戦インドネシアGPは今週、初開催となるマンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットで行われます。

果たして、どんな結果になるのでしょうか。

日本の3メーカーの逆襲はあるのか…注目されます。

ネットの声

「開発費が掛かる共通ECUがなかったらKTMの参入は厳しかったでしょうし、新規参入組への優遇措置もあるので、運営側の思い通りになっただけのように思います。混戦でレースは面白くなったわけですし。欧州企業優遇のルールの中で頑張っている日本メーカーはあっぱれです。それにmotogpの中上選手、moto2の小椋選手、moto3ではハスクバーナの佐々木選手にKTMの鳥羽選手など世界に誇るべき日本人ライダーもいます。将来的に実力でKTMやDucatiに乗れるライダーが育ってくれば、それはそれでいいのかなぁと思って応援しています。」

「今シーズンはまだ始まったばかりなので今後どうなっていくかはわかりませんが、昨年、元GPライダーの原田哲也さんもドゥカやKTMは本当に速くなったと言ってた位なのでそれは間違いない事だと思います。個人的には国産のバイクが好き、と言うよりバイクそのものが好きな私としては国内外いろんなメーカーが鎬を削ってレースをする方がエキサイティングだし、国産以外のメーカーを知る事でバイクの歴史のひとつを垣間見られる楽しさがある事は良い事だと思います。それよりも寧ろ、日本人ライダーの活躍の方が気になります。F1にしろMOTO GPにしろ国産車のハード面で活躍する事はあってもソフト面での大きな活躍を最近見ていないなぁと感じてます。いつかはマルケスの様な圧倒的な速さを持つ日本人ライダーを見てみたいものです。」

「欧州メーカーが進化したのは事実かもしれないが、欧州メーカーを育てたいというMotoGPの政治的な要望に、ホンダとヤマハが協力して開発の制限を受け入れたことを書かないと、誤解を招く。面白い状況を作ったのはむしろホンダとヤマハ。そこをちゃんと評価して欲しい。」

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