「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作にして、第169回芥川賞候補作。
市川沙央「ハンチバック」。耳障りの良い言葉で「弱者」「障害者」に優しく振る舞っている世界の化けの皮を引き剥がしていくような感覚。化けの皮を剥がした先に見える景色はいかほどに。「生きるために壊れる、生き抜いた証として破壊されていく」肉体から発せられる怒り。一気に読んだ。 pic.twitter.com/kkkuMRUZyI
— まーれい (@marereii) July 2, 2023
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。
『ハンチバック』市川沙央
「生きるために壊れてきた」身体の私。全てを達観した物の味方が社会に蔓延る健常者の優位性と障害者に対する透明な差別を浮き彫りにする。痰が絡まる、肺が潰れる、弱者にされる、いない事にされる、全ての息苦しさを追体験した先にあなたの見ている景色はどう変わるのか。 pic.twitter.com/FlI89pi3ag— 蔵書印/読書account?? (@zousyoin) July 9, 2023
「内容があまりに衝撃的で読み終わった後放心状態でした。なにがショックだったかわからないくらいあれもこれも自分が知らない大変な日常を送っておられる人がいて、壮絶に生き抜いているということ。またその心の内をあますことなく正直に吐露されている文章がすごかったです。でも淡々としていて重々しい感じはありませんでした。読後感も悪くなく、割り切りとか、悟りが深くてさわやかな感じを受けました。」
「仕事と育児で読書習慣から遠ざかっていた私でも、力強い文章にねじ伏せられるように一気に読んだ。彼女から溢れ出る文章が、もっと世に出る事を願う。」
「障害を持ち、自らを「せむし(ハンチバック) の 怪物」という主人公が展開する、軽妙そうで深く、心を抉る作品です。
同じ時期に、LGBTの男を主人公に、自らを曝け出す、気鋭の思想家のゲイ小説(モドキ)も読みましたが、この「ハンチバック」の方が数段心に突き刺さります。何が違うのか?小説としての「たくらみ」が違うように思います。いくつもの奥深い仕掛けが違います。感服しました。最近の芥川賞受賞作品にはほとんど失望してきました。村上春樹も吉本ばななも芥川賞は取っていないので、取る取らないはどうでもいいですが、久々にインパクトのある方が登場したと思います。」
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