十の輪をくぐる 辻堂ゆめ(著) 小学館 (2020/11/26)

スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。

あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は・・・・・・東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。

泰介は、九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づく。

51年前――。

紡績工場で女工として働いていた万津子は、19歳で三井鉱山の職員と結婚。夫の暴力と子育ての難しさに悩んでいたが、幼い息子が起こしたある事件をきっかけに、家や近隣での居場所を失う。

そんな彼女が、故郷を捨て、上京したのはなぜだったのか。

泰介は万津子の部屋で見つけた新聞記事を頼りに、母の「秘密」を探り始める。

それは同時に、泰介が日頃感じている「生きづらさ」にもつながっていて――。

1964年と2020年、東京五輪の時代を生きる親子の姿を三代にわたって描いた感動作。

前作『あの日の交換日記』が大好評。

いま最も注目を集める若手作家・辻堂ゆめの新境地となる圧巻の大河小説!!

【編集担当からのおすすめ情報】
今作は、半分は母・万津子が青春時代を過ごした1950年代、60年代を舞台にしています。紡績工場の女工たちの過酷な労働や、炭鉱で働く男性たち、夫から虐げられる女性の日常が、鮮やかに、ときに生々しく描かれていきます。
万津子が話す大牟田弁は、著者の大牟田出身のお祖母様が監修してくださったとのこと。さらに当時のことをたくさん取材したという当時の背景描写も相まって、20代の著者が書いたとは思えないリアルさには、どこか懐かしさすら感じられるほどです。

景色も価値観も、めまぐるしい速度で変化していく東京。女性の社会進出や、LGBTQ、人種問題など、個性の在り方、捉え方は、日々アップデートされていきます。この作品は、時代とともに変化する生き方の指針にもなる傑作だと思っています。(このあたりはネタバレになってしまうので、ぜひ、読んでお確かめください!)
2020年の東京オリンピックは幻の中に消えてしまいました。明るい未来を2021年に託し、この作品を送り出したいと思います。
辻堂さんがひときわ力を入れて書かれた今作が、さらに次の世代へと読み継がれる作品になりますように。祈りを込めて編集しました。ぜひ、お手にお取りください。


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