鷗外青春診療録控 千住に吹く風 山崎光夫(著) 中央公論新社 (2021/8/18) 1,870円

森林太郎(鷗外)は明治14年(1881)7月、満19歳で東大医学部を卒業。

同年12月に陸軍に出仕するまで、千住で開業医をしていた父の診療を手伝っていた。

卒業時の席次が8番と不本意なものだったため、文部省派遣留学生としてドイツに行く希望はかなわなかった。

幼少時から抜群の秀才として周囲の期待を集め、それに応えつづけた林太郎にとって、わずか半年足らずとはいえ、例外的に足踏みの時代だったといえる。

本作は、自分の将来について迷い煩悶しつつも、父とともに市井で庶民の診療に当たっていた林太郎が、さまざまな患者に接しながら経験を積み、人間的にも成長してゆく姿を虚実皮膜の間に描く連作小説集である。

著者について
山崎光夫
一九四七年福井市生まれ。早稲田大学卒業。放送作家、雑誌記者を経て小説家に。八五年『安楽処方箋』で小説現代新人賞を受賞。医学・薬学関係に造詣が深い。小説に『ジェンナーの遺言』『ヒポクラテスの暗号』『精神外科医』『風雲の人 小説・大隈重信青春譜』『小説曲直瀬道三 乱世を医やす人』など多数。ノンフィクションに『東京検死官』『逆転検死官』『戦国武将の養生訓』『薬で読み解く江戸の事件史』『胃弱・癇癪・夏目漱石 持病で読み解く文士の生涯』など。九八年『藪の中の家 芥川自死の謎を解く』で第十七回新田次郎文学賞を受賞。


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