サラ金の歴史 消費者金融と日本社会 小島庸平 (著) 中央公論新社 (2021/2/20) 1,078円

利用したことはなくても、誰もが見聞きはしたサラ金や消費者金融。

しかし、私たちが知る業態は、日本経済のうねりの中で大きく変化して現在の姿となったものだ。

素人高利貸から団地金融、そしてサラ金、消費者金融へ……。

好景気や金融技術の発展で躍進するも、バブル崩壊や社会問題化に翻弄されていった業態について、家計やジェンダーなど多様な視点から読み解き、日本経済の知られざる一面を照らす。

著者について
小島庸平(こじま・ようへい)
1982年東京生まれ.東京大学大学院経済学研究科准教授.2011年,東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了.博士(農学).東京農業大学国際食料情報学部助教などを経て現職. 著書『大恐慌期における日本農村社会の再編成』(ナカニシヤ出版,2020年,日経・経済図書文化賞受賞) 共著『昭和史講義2』(ちくま新書,2016年),『戦後日本の地域金融』(日本経済評論社,2019年)など.

「これは労作。何らかの賞を受賞しても驚かないくらい中身が充実している。
サラ金が個人間融資から生まれ、団地金融、サラ金に発展していったところを、金融技術、人との関わり、家計からの観点から分析している。
なぜサラ金が存在するのか、なぜセーフティネットのような機能を果たすことがあったのか。極力、業者、利用者のどちらにも肩入れしないように書かれている。そのため、サラ金被害をことさらに強調はしていない。
大手のほとんどが銀行系に吸収され、金融システムの一部となったサラ金の今後を考えさせられた。」

「司法書士として債務整理業務に従事するなか、興味が湧いたので読んでみました。
実によく取材されており、他の書籍の引用が多数されています。
タイトル通り、サラ金の歴史はいやというほどよく分かります。
しかし、あまりに詳細な著述に、途中少し食傷気味になってしまい、読み飛ばしたところもあります。
よって、星4つとしました。」

「戦前期以降の家計金融の歴史を、主にサラ金に視点を当てて描いた若手経済史家の意欲的な著作。戦前は貧困街のアウトローな世界だったが、戦後に先駆者達がサラリーマンや主婦にターゲットを広げ、家計の資金調達行動が広がった経緯については知らない事が多かった。従来の学者が見落としていた分野とも言えるが、社会的にランクが低いサラ金業の盛衰が、金融技術の発展の視点で描かれているのが興味深かった。規制されていた銀行と消費者金融の棲み分け共存関係が分かりやすく描写。記憶に新しい所では、2000年代の貸金規制法強化で、多くの優良な上場企業(経団連にも加盟)だった消費者金融がなくなり、メガバンク等に組み込まれた経緯は懐かしいと思っていたが、森雅子議員がこの時の規制強化に大きな役割を果たしていたのは知らなかった。」


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