仏教徒でも難しい?「如来」「仏陀」「お釈迦様」の違い

知ってるようで知らないかも?「如来」「仏陀」「お釈迦様」の違いについて

日本人は無宗教だと言われてはいるものの、各世帯でお墓を持っていたり、ご先祖様の霊があの世から帰ってくるとされる“お盆”を重んじていたりと、仏教の教えに強い結びつきがあります。

国内にはコンビニの数より寺院が存在していますし、普段参拝しない人でも “如来”という言葉に聞き覚えはありませんか?

ここではその如来の意味をはじめ、同列に語られる仏陀、お釈迦様について、その違いをご紹介します。

如来の意味とは

如来と付く言葉に、釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来などがあるため、固有名詞のように思っている人も多いかも知れませんが、如来とは“永遠の真理である『悟り』を完全に開き、体得した人”を意味しています。

そもそも仏教の教えでは、輪廻の世界からの脱出を説いており、如来はその輪廻の世界から輪廻をしない世界へ渡ることに成功した人です。

悟りを開くと涅槃 (ねはん)の状態になれるとされており、完全な静寂や、自由、最高の幸福の状態になれるとされています。

また仏教の言葉には、救済の仏様とされる観音菩薩もよく登場しますよね。

観音菩薩とは悟りを開くために修行中の仏様を意味しており、人々を救うためにあえて悟りを開かず輪廻の世界に留まり続けているとも言われています。

お釈迦様の意味とは

如来と同じくよく耳にするのが “お釈迦様”。

お釈迦様とは、約2500年前に実在した仏教の創始者『ゴータマ・シッダール』のことで、名前は彼が古代北インドで栄えた釈迦族の王子だったことに由来しています。

釈迦とはインドのサンスクリット語では、“有能”の意味として使われます。

お釈迦様は妻と息子とともに平穏な生活を送っていましたが、“生きること、老いること、病気になること、死ぬこと”の苦しみから、なんとか人々を救うことはできないかを考え、29歳の時に家族を残して出家をします。

出家後はバラモン教の教えに従いながら修行の日々に明け暮れ、35歳の時に悟りを開くことに成功したそうです。

その後は修行を共にした5人の修行者たちに教えを説くとともに、80歳で没するまで人々に仏教の教えを説き続けたといいます。

仏陀の意味とは

仏教の教えを紐解いていくと、“仏陀”という言葉もよく目に入るかと思います。

仏陀は、お釈迦様のことを指す固有名詞として使われることがありますが、サンスクリット語の “budh (目覚める)”を語源とする『目覚めた人』、『悟りを開いた人』のことを指す言葉であり、本来の使い方とは異なっていることがわかりますね。

釈迦如来・薬師如来・阿弥陀如来・大日如来にはどんな違いがある?

悟りを完全に開いた仏様には、釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来、大日如来などが挙げられます。それぞれの仏様にはどのような違いがあるのでしょうか。

釈迦如来とは。またどこで見られるか

お釈迦様とは仏教の創始者のこと。また如来とは悟りを体得した人。

釈迦如来は、ゴータマ・シッダール本人ということがわかります。

釈迦如来は後述する他の如来像の、言わば基本形の姿とも言え、螺髪 (らはつ : 丸い塊が幾重にもついている髪型のこと)や、白毫 (びゃくごう : 額の点)などの特徴は、他の如来像でも見て取れます。

【釈迦如来像が見られる場所】

  • 法隆寺 (奈良県生駒郡斑鳩町) / 釈迦三尊像 国宝
  • 室生寺 (奈良県宇陀市) / 中尊 釈迦如来立像 国宝
  • 東大寺 (奈良県奈良市) / 銅造 誕生釈迦仏立像 (灌仏盤) 国宝
  • 清凉寺 (京都府京都市) / 赤栴檀の釈迦如来像 国宝
  • 蟹満寺 (京都府木津川市) / 釈迦如来座像 国宝
  • 深大寺 (東京都調布市) / 釈迦如来像 国宝
  • 興福寺 (奈良県奈良市) / 木造釈迦如来坐像 重要文化財
  • 善光寺 世尊院 (長野県長野市) / 釈迦涅槃像 重要文化財
  • 正法寺 (岐阜県岐阜市) / 岐阜大仏 重要文化財

薬師如来とは。またどこで見られるか

薬師如来について説かれた経典 “薬師瑠璃光如来本願功徳経 (薬師経)”によると、薬師如来は東にあるとされる仏の世界 瑠璃光浄土において教主を務めている仏様です。

人々の病気の治療をはじめ、延命、さらには精神的な苦痛も取り除くと信じられており、主に現世利益に肖れる仏様として信仰されてきました。

また、日光東照宮でお馴染みの東照権現信仰では、徳川家康公を神格化した東照大権現は、薬師如来が人間界に現れた際の姿とされています。

【薬師如来像が見られる場所】

  • 法隆寺 (奈良県生駒郡斑鳩町) / 薬師如来像 国宝
  • 薬師寺 (奈良県奈良市) / 薬師三尊像 国宝
  • 奈良国立博物館 (奈良県奈良市) / 薬師如来坐像 国宝
  • 新薬師寺 (奈良県奈良市) / 薬師如来坐像 国宝
  • 唐招提寺 (奈良県奈良市) / 薬師如来立像 国宝
  • 醍醐寺 (京都府京都市) / 薬師如来坐像 国宝
  • 神護寺 (京都市右京区) / 薬師如来立像 国宝
  • 獅子窟寺 (大阪府交野市) / 薬師如来座像 国宝
  • 勝常寺 (福島県河沼郡湯川村) / 木造薬師如来坐像 国宝
  • 双林寺 (宮城県栗原市) / 薬師瑠璃光如来坐像 重要文化財
  • 一畑山薬師寺 (愛知県岡崎市) / 薬師如来涅槃像

阿弥陀如来とは。またどこで見られるか

サンスクリット語で “Amit?bha (はかりしれない光を持つ者)”、または “Amit?yus (はかりしれない寿命を持つ者)”の意味を持つ阿弥陀如来は、全部で48の大願を立て、苦しい修行の末に悟りを開いたとされる仏様です。

この大願の中にて “念仏を行う者は必ず極楽浄土へ行ける”と説いており、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることにより、極楽浄土で往生できるとされています。

薬師如来が東にある極楽浄土の教主であるのに対して、阿弥陀如来は西方にある仏国土の教主を務めているとされています。

【阿弥陀如来像が見られる場所】

  • 仁和寺 (京都府京都市) / 阿弥陀如来坐像 国宝
  • 三千院 (京都府京都市) / 阿弥陀三尊坐像 国宝
  • 浄瑠璃寺 (京都府木津川市) / 九体阿弥陀如来坐像 国宝
  • 法界寺 (京都府京都市) / 木造阿弥陀如来坐像 国宝
  • 平等院 (京都府宇治市) / 阿弥陀如来坐像 国宝
  • 浄土寺 (兵庫県小野市) / 阿弥陀三尊立像 国宝
  • 願成就院 (静岡県伊豆の国市) / 阿彌陀如来坐像 国宝
  • 高徳院 (神奈川県鎌倉市) / 銅像阿弥陀如来坐像 (鎌倉大仏) 国宝
  • 法隆寺 (奈良県生駒郡斑鳩町) / 阿弥陀如来および両脇侍三尊像 国宝
  • 東京国立博物館 (東京都台東区) / 阿弥陀如来立像 重要文化財
  • 九州国立博物館 (福岡県太宰府市) / 阿弥陀如来立像 重要文化財
  • 東本願寺 (茨城県牛久市) / 牛久阿弥陀大佛 (牛久大仏) 重要文化財

大日如来とは。またどこで見られるか

真言密教の教主とされる大日如来は、宇宙の心理、また宇宙そのものを現しています。

生きとし生けるもの全ては大日如来から生まれたとされ、仏教の創始者である釈迦如来も、またその他の仏様も含めて大日如来の化身と説かれています。

サンスクリット語では “Mahvairocana ”、「偉大な輝くもの」という意味を持っており、摩訶毘盧遮那如来 (まかびるしゃなにょらい)、大光明遍照 (だいこうみょうへんじょう)とも呼ばれる場合があります。

また日本古来からある山岳信仰においては、富士山は“大日如来”であるとされ、富士山山頂には仏の世界が広がっていると考えられていました。

【大日如来像が見られる場所】

  • 金剛寺 (大阪府河内長野市) / 木造大日如来坐像 国宝
  • 圓成寺 (奈良県奈良市) / 大日如来坐像 国宝

あとがき

よく混同しがちな如来・仏陀・お釈迦様の意味と、釈迦如来・薬師如来・阿弥陀如来・大日如来の違いをやや駆け足ですが解説してきました。

仏学を紐解くと似たような意味合いで書かれているので、詳細まで知らなかったという人も多いのではないでしょうか。

全国には文化史的に重要な意味合いを持つ仏像が、沢山残っています。

この記事をきっかけに仏像巡りに出かけるのもいいかもしれませんね。

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