黒船のペリー提督が日本食に愚痴を…『人間愚痴大全』

「日本人の食物に関しては、たいへん結構とは言いかねる」ペリー

歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた。

渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、人生の苦境で言わずにおれなかった愚痴150篇。

女性への未練、お金の無心や仕事の焦り、家族への恨みなど現代人と変わらない不平不満です。

読めばなぜか勇気がわいてくる、愚痴ノンフィクション。

60代、不遇・人生にまつわる愚痴…ペリー

1794 年-1858。アメリカ・メキシコ戦争などで活躍後、東インド艦隊司令長官となり、大統領の国書を持って日本に開国を迫るため、1853年、浦賀に来航。日米和親条約締結に成功しました。

著書に『ペルリ提督日本遠征記』など。

1853年、鎖国下にあった日本を開国させるため、4隻の黒船を率いてやって来た東インド艦隊司令官ペリー。

当時、ペリーは既に59歳となっていて、かなりなベテラン軍人ではあったのですが、その高圧的な姿勢が幕府を驚かせ、見事、日本を開国に導いた功績は大きいといっていいでしょう。

そのペリーが、翌年、食事の接待を受けた際の言葉が残っています。

初めて食べた日本食のリアクション

「日本人の食物に関しては、たいへん結構とは言いかねる。見た目の美しさや豪華さにどんなに贅をこらそうとも、日本の厨房はろくなものを生み出していないと言わざるをえない」

と、かなり手厳しいのです。

いったいどんなまずい料理を出したのかと思い、当時のメニューを見てみると、「花子巻鯛の吸い物」「ヒラメ、鯛小川巻などの刺身」「豚煮」「鴨、タケノコなどの入った椀」「車海老、目打白魚などの入った丼」……などなど。

いかにもおいしそうなメニューが、ここには書ききれないほど並んでいるのです。

しかも、辛口のペリーをして「見た目の美しさや豪華さにどんなに贅をこらそうとも」といわしめるだけの美しい器に、きれいな盛り付けがしてあったのでしょう。

最高級の日本料理だとわかります。

しかし、ペリーら外国人の口には合わなかったようです。

考えてみれば、日本食の花形である刺身は、基本的に当時の西洋人は食べません。

味付けも江戸時代当時ですから、純日本風で調味料は少なく、現代人からすれば淡泊だったことでしょう。

しかも、当時の日本人は、基本的には牛や豚などの肉は食べませんでした。

おそらく、ペリーたちに気を使って「豚煮」を用意したのでしょうが、ステーキやハンバーガーを食す人たちにとっては、物足りないものだったのは想像に難くありません。

日本の食事については、あの、大森貝塚を発見したモースも、ある町で食べた日本食に関して、

「非常に貧弱な魚の羮(スープ)」「不味くもない豆の糊(ペースト)状物」「割合に美味な海胆の卵」「断じて口には合わぬ(中略)海鼠」「ショーユという日本のソースをつけて食う。ソースはあらゆる物を、多少美味にする」

などと、必ずしも好意的とはいえない意見を述べています。

しかもその後、

「珈琲一杯と、バタを塗ったパンの一片とが、恋しくてならぬ」

と述べているのです。

彼らが今や日本食が西洋人の間でも大人気だと知ったら驚くことでしょう。

それとも、どんなにおいしい外国料理を食べても、やはり生まれ育った国のソウルフードが恋しくなるのは、いつの世も変わらないということなのでしょうか。

遠いヨーロッパで、梅干しの話をした斎藤茂吉夫妻のように……。

人間愚痴大全 福田智弘(著) 小学館集英社プロダクション (2021/10/21) 2,200円

「アルコールでごまかすより外なかった」 「鎧が今日は重うなったるぞや」 天才と呼ばれる作家に芸術家、世界を変えた政治家に勇猛な武将まで、 歴史に名を残す人物たちも、実は「愚痴」をこぼしながら生きていた。

しかも、その熱量は常人の比ではない。

怒りや恨み、諦めの思いが強くこもる。 「デモンに憑かれろ! 」 「ただ死あるのみ」 本書では、渋沢栄一から夏目漱石、豊臣秀吉にナイチンゲールまで、 人生の苦境で言わずにはおれなかった愚痴150篇を収録。

女性への未練にはじまり、お金の無心や仕事の焦り、 家族への恨みや健康の心配など、 現代人と変わらない、大小さまざまな不平不満だ。

笑えるほどに情けない姿の数々。

読めばなぜか勇気がわいてくる、どん底に見る人生エンタテイメント!

ネットの声

「世は何とか大全なるものが大はやりであるが、この「人間愚痴大全」はどちらかというと、致知出版社の「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」に近いだろう。
寝る前や帰りの電車で読むといいかもしれない。
1話が見開き2ページで150話もあるので、しばらく楽しめるかもしれない。
個人的には、わざわざ人の愚痴を聞きたいとは思わない。
しかし、こう言うのが好きな人はいると思う。」

 

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