ランニングはやっぱり健康にいい!うれしい変化も

ランニングを始めた人に訪れるうれしい変化

「適度なランニングが体にいいことは知っているけど、具体的に体のどこがどう変わるのかはあまり考えたことがない」という人は少なくないはず。

外で風を浴びながら走るのが好きな人にも、屋内のランニングマシンで汗を流すのが日課の人にも表れるランニングの健康効果について、イギリス・ラフバラー大学の運動生理学者であるリチャード・ブラグローブ氏が解説しています。

筋肉の変化

ランニングは、ウエイトトレーニングのような筋肉の増強を主な目的とした運動ではないので、筋肉の見た目の変化は比較的緩やかですが、ミクロの視点では着実に変化します。

それが、細胞内でのエネルギー代謝に深く関わっているミトコンドリアや、筋肉に酸素を供給する血管の増加です。

ブラグローブ氏によると、ランニングによりミトコンドリアの数とサイズが増加することで、ミトコンドリアがより効率的にエネルギーを生み出せるようになるとのこと。

これにより、筋肉を動かす際により大きな力を発揮することができるようになります。

ブラグローブ氏は「ランニングのような有酸素運動をすると、酸素を使ってエネルギーを生み出すミトコンドリアのサイズや数が増加したり、筋肉に酸素を供給する毛細血管の数が増えたりといった変化が筋肉に表れます。

また、筋力トレーニングをしていない高齢者がランニングをすると、筋肉量が大幅に増加し筋力が向上したというエビデンスもあります」と話しました。

骨の変化
19世紀後半に活躍したドイツの外科医、ユリウス・ウォルフは、「骨は、それに加わる力に抵抗するのに最も適した構造を発達させる」という「ウォルフの法則」を提唱しました。ランニングでも、このウォルフの法則にのっとったプラスの効果が得られることが分かっています。

「ランニングは衝撃を伴う運動です。特に、下肢の骨には足を踏み出す度に体重の2~3倍もの力がかかります。このような衝撃は骨にとって有益で、骨密度の変化を促し、その後の人生で骨粗しょう症を発症するリスクを低減させることができます」とブラグローブ氏は述べています。

代謝の変化

ここでいう「代謝」とは、「呼吸、血液循環、体温調節、筋肉の収縮、食物や栄養素の消化など、エネルギーを変換または使用する体内のすべての物理的・化学的プロセス」のことを指します。

代謝によって消費されるエネルギーは、個人の年齢や身長・体重などの条件によって異なりますが、ランニングを始めとする身体活動の強度によっても変化します。

体を動かせばその分エネルギーが消費されますが、ランニングではそれだけにとどまらない効果が期待できるとのこと。

ランニング後の代謝の変化について、ブラグローブ氏は「ランニングなどの運動をすると、エネルギー需要の増加に対応するために代謝が上がります。

特に、高強度のランニングをした後には、代謝が最大で36時間上昇したままになります。

つまり、休んでいる間にもより多くのカロリーが消費されるようになり、長期的には体脂肪も減少するのです」と話しました。

循環器系の変化
循環器系とは、体内を巡る血管と臓器のネットワークのことで、酸素と栄養を体に供給したり二酸化炭素や老廃物を除去したりといった生命に重要な役割を果たしています。

そのため、もし動脈内に脂肪が蓄積して血栓ができやすくなるといった循環器系の問題が発生すると、脳卒中や心臓発作、冠状動脈性心疾患といった循環器系疾患のリスクが増大します。

ランニングにより心肺機能が向上すると、これらの循環器系の疾患が発生する危険性を低減させることができるとのこと。

ブラグローブ氏は、

「ランニングような有酸素運動を週に数回程度、定期的に行うことで循環器系の疾患の発症リスクが低下するという説得力のあるエビデンスがたくさんあります。運動は血圧を調整し、心機能を向上させ、余分なエネルギーを燃焼させ、血糖値を調節するインスリンの感受性を向上させてくれます。これらは全て、高血圧や2型糖尿病などのリスクの低減に貢献してくれます」

と話しました。

メンタルヘルスや学習能力への影響

ランニングの効果は、肉体だけでなくメンタルヘルスにも及びます。

ランニングとメンタルヘルスに関する研究100件以上を分析した2020年の研究により「ランニングは精神の健康、特にうつ病や不安障害に対してプラスで重要な影響を与える」という結論が導き出されました。

「ランニングは自尊心の向上にもつながりますし、ランニングによって得られるランナーズハイは気分の改善に役立ちます。さらに興味深いことに、定期的なランニングは学習能力の向上とも関連しており、高齢者の認知機能の低下を軽減することも分かっています」

とブラグローブ氏は述べました。



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