加齢でトイレに行く回数が増えた…夜中は転倒リスクも

なぜトイレに行く回数は加齢で増えるのか? 旅行に行けない、夜中に起きて転倒リスクも

60代以上の排尿に関する悩みのなかで、夜間頻尿は第1位、昼間の頻尿は第2位を占めています。

旅行に行けない、眠りが浅いなど、QOL(生活の質)を左右する深刻な症状です。

なぜ加齢とともに頻尿が増えてくるのでしょうか。

トイレの回数は1日5回

頻尿の推定患者数は、3300万人(昼間)、4500万人(夜間)。2003年におこなわれた大規模調査のデータに基づくもので、膨大な数字ですが、現在ではその数はさらに増えていると考えられます。

通常、成人の1日の尿量は約1500cc。

膀胱は300~400ccの尿をためることができて、排尿の際には残りなく排出できます。

単純計算で、トイレの回数は1日5回程度ということになるのです。

頻尿は昼間に8回以上行く場合、夜間頻尿は就寝中に1回以上行く場合と定義されています。

しかし、夜、1回トイレに起きるという人は少なくありません。

そのため、臨床の場では、2回以上を夜間頻尿とすることが多いのです。

尿量が増える尿をためられない

なぜトイレに行く回数が増えるのでしょうか。

多量に水やお酒を飲んだ、寒い時期で汗をあまりかかないなどで何度もトイレに行くのは生理的な現象ですが、それ以外では、次のようなことが起きていると考えられます。

▼尿の量が増えている(多尿・夜間多尿)
尿の量が増えれば、何度もトイレに行くことになります。

この場合は、二つのタイプに分けられます。

(1)昼間~夜間通して1日の尿量が増えている

(2)おもに夜間の尿量が増えている(夜間尿量が1日の尿量の33%以上)

多尿は、水分の過剰摂取、尿量を増やす利尿薬などの服用、尿量をコントロールする「抗利尿ホルモン」の分泌量の減少などが原因となります。

また、心臓や腎臓の病気などの全身疾患から引き起こされるケースも少なくありません。

▼膀胱の容量が小さくなっている
1日の尿量は正常なのに頻尿になる場合、膀胱に十分に尿がためられない「蓄尿障害」が起きていると考えられます。

膀胱は、おもに平滑筋という筋肉でできています。

尿をためるときには膀胱の筋肉は緩み、容量は大きくなります。

排尿の際には膀胱は収縮し、尿を押し出します。

膀胱に十分に尿がたまらないうちに尿意が起きてトイレに行きたくなる「尿意切迫感」が起こると、頻尿になるのです。

この場合、いわば膀胱が過敏になって、過剰に反応してしまう「過活動膀胱」という病気が原因になっていることが少なくありません。

特に女性では頻度が高いようです。

また、加齢によって膀胱の筋肉が硬くなって弾力を失い、容量が小さくなることもあげられます。

そのほか、10~30代の若い世代の頻尿では、原因疾患が見つからない「神経性頻尿」が多くなります。

過度なストレスなど、心理的な誘因で起こるのですが、ここでは説明を省略します。

頻尿に悩む人が増えてくるのは50代後半から。

膀胱の機能低下だけでなく、尿の通り道である尿道も加齢によって働きが十分でなくなることが多くなります。

尿道には括約筋があり、締めて尿をこらえる/緩めて排尿するという働きをしています。

日本大学板橋病院病院長の高橋悟医師は次のように話します。

「括約筋の締める力だけではなく、膀胱との協調運動がスムーズでなくなることが、頻尿などの過活動膀胱症状に関与しているのではないかと考えられています」

男性では、膀胱の出口近くに尿道を囲むようにして存在する前立腺も排尿に大きく影響します。

加齢によって前立腺が肥大する「前立腺肥大症」になると、尿が出にくいなどの排尿障害のほかに過活動膀胱を起こし、頻尿があらわれることがあります。

また、前述した抗利尿ホルモンは水分を尿として排出する前に、再度吸収して尿量をコントロールする役割をもっているのですが、加齢によって分泌量が十分でなくなると、尿量を減らせなくなり、特に夜間頻尿があらわれます。

生活に支障が出たら治療を考慮する

最初に頻尿の定義をあげましたが、回数は一つの目安で、生活に支障があるかないかで受診を考慮することが望ましいです。

しかし、それほど困らないからといって放置していると、さまざまなリスクが高くなります。

昼間の頻尿では、遠出や旅行ができない、人と会食していてもトイレのことばかり心配しているなどで、活動を制限してしまうことになります。

トイレの回数を減らそうと、ついつい水分摂取を控えてしまい、特に夏には脱水症の危険が高くなるのです。

夜間頻尿の場合は、何度も睡眠をさまたげられるため、睡眠の質が低下し、疲れが取れない、頭がすっきりしない、昼間でも眠いなどの状態に陥りやすくなります。

さらに気をつけたいのは、夜トイレに起きたときは転倒リスクが高いこと。

うす暗い中で、すぐにはからだが動きにくい状態でトイレに急ぐことにより、転倒し、大腿骨頸部骨折や頭部外傷を起こしやすくなるのです。

夜間の排尿が2回以上の高齢者は、1回以下の高齢者に比べて転倒による骨折リスクが2倍以上になるという調査報告もあります。

夜間頻尿では、高血圧や糖尿病、心不全、慢性腎臓病などの存在が指摘されるケースも少なくありません。

これらの全身疾患の一症状としてとらえることもできるため、放置することは避けたいところです。

桜十字病院泌尿器科医長の吉田正貴医師は、こう話します。

「頻尿や夜間頻尿は、確かに高齢になると増えてきます。しかし、男性なら前立腺肥大症、女性なら過活動膀胱など、原因となる病気があることが多く、適切な治療を受ければ改善できるものがほとんどです。『年だから仕方がない』と考えるのではなく、生活に支障が出るようになったら、かかりつけ医に相談することをおすすめします」

ネットの声

「高齢の母は、若い時から頻尿で、夜中に5~6回はトイレに起きている。だから睡眠不足で、昼間も眠いとこぼしている。本人曰く膀胱の筋力が衰えて、尿を十分にためることが出来なくなったからだ。病院へ行くことを勧めたが、年だからと言って行こうとはしない。

若いころはともかく、今は年老いてきたので、尿パッドが必要となった。しかし、昼間でも1時間たつかたたないうちに、尿意を感じてトイレに行く母。

1回の尿が十分出きっていないので、常に残尿感があると話していた。自分もいつかはこうなるのだろうか。年は取りたくないものだ。」

「全部出きらず残尿になってる事もあるんです。トイレに行って時間がそれほど過ぎて無いのにジワジワと行きたくなるので無く、突然もりそうな勢いで尿意がやって来る。慌ててトイレに行っても短時間だからそれほど沢山出る訳じゃ無い。なんだこれだけ?って感じです。非常に厄介な病気です。」

「急性前立腺炎になった時20分に一回ペースで小便が出て脱水して死ぬと思ったな。その後40度の熱出てマジで死にかけたわ。」

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