揚げ物食べても長生きできる!?トンカツもコロッケもフライも…

「長生きしたいなら揚げ物をたくさん食べなさい」在宅医療の第一人者がそう断言するワケ

長生きをするには、どんな食生活が望ましいのでしょうか。

医師の佐々木淳氏は「高齢者になったら痩せるのは危険だ。揚げ物や肉料理がメインの惣菜や弁当を積極的に食べて、カロリーとたんぱく質をたっぷり摂ったほうがいい」といっています。

高齢者ほど出来合いの惣菜や弁当を食べたほうがいい

高齢になると、1日3食いちいち食事をつくるのがめんどうになることもあります。

特にひとり暮らしの場合、自分が食べる分だけのために料理をするのが億劫になってくることが少なくありません。

料理をする手間を省くのは構いませんが、摂取するカロリーやたんぱくの量を減らすのはやめましょう。

いちばん手っとり早いのは、出来合いのお惣菜やお弁当を食べること。

もちろん、外食をしたり出前を取ったりするのでもよいのですが、いちいちお店に出かけたり注文したりするのも手間ですし、外食や出前を頻繁に利用していると経済的にも出費がかさみますよね。

その点、スーパーやコンビニでお惣菜やお弁当を買ってしまえば、ラクして気軽に食事を調達できます。

こうしたお惣菜やお弁当をセレクトする場合、高齢者のみなさんはできるだけカロリーが高くてたんぱく質たっぷりなものを選ぶようにしてください。

「食欲がないからごはんはいいや」は禁物

お惣菜なら唐揚げやとんかつ、コロッケ、フライ、てんぷらなどの揚げもの、脂をたっぷり使った中華系惣菜などがおすすめ。

お弁当なら焼き肉弁当、すき焼き弁当、チンジャオロース弁当など、お肉がドカンと入ったこってり系がおすすめ。

逆に、「今日はサラダだけでいいや」「今日はおにぎり1個で済ませちゃおう」といったセレクトは避けてください。

こういった低カロリーで低たんぱくな食事をしていると、体重や筋肉が減少し、身体の衰弱を加速させてしまいます。

「あまり食欲ないから、食べなくていいや」ではなく、「どうしたら、おいしくしっかり食べられるか」を考えてみてください。

なお、どんなに億劫でも、食事を抜いてしまうのは厳禁です。

これは高齢者がいちばんやってはいけないこと。

たとえ食欲がなくても、食べるべき時間になったらちゃんと食事らしいものを口に入れるようにしましょう。

カップ焼きそばに生卵を落としてタンパク質をプラス

もし、つくるのもめんどうだし、スーパーに買いものに行くのもめんどうという場合は、買い置きのカップラーメンでもよいのです。

毎日でなく「たまの手抜き」で食べる分には、まったく問題ありません。

カップラーメンはけっこうカロリーが高く、高齢者にとっては重宝する食品なのです。

とりわけ、カップ焼きそばはかなりの高カロリー食品で、普通サイズでなんと500~600kcalもあります。

ただ、カップラーメンやカップ焼きそばは、たんぱく質が足りません。

でも、「サバ缶」でも一緒に食べれば、カロリーもたんぱく質もけっこう理想的な量を摂取できることになります。

あるいは、カップラーメンとゆで卵を一緒に食べたり、カップ焼きそばに生卵を落として食べたりしてたんぱく質を「ちょい足し」していくのもいいかもしれません。

日本の高齢者は全体に“低体重”傾向にある

ここでちょっと、日本の高齢者がいかにやせているか、医学的データを元に状況をチェックしてみましょう。

太っているのか、やせているのかの基準となる指標にBMIがあります。

これは身長(メートル)を2乗した数字で体重を割ると計算できます。

一般的にはこのBMIが25を超えると「肥満」、18.5を下回ると「やせ」、中でも22が最も病気のリスクが低くなることから「標準体型」とされています。

全国の訪問看護を利用している高齢者のBMIを調査したところ、BMIが18.5もない「低体重」に該当する人が60%にも上ることが明らかになりました。

中でもBMI16未満の「重度のやせ」の人が28%もいたのです。

女性の場合、BMIが16未満だと、BMI22の人に比べて死亡リスクが2.6倍にアップすることがわかっています。

BMI18.5でもかなりやせ型ですが、BMI16となると、もう筋肉まで落ちてガリガリにやせた状態です。

私は、こうした日本の高齢者の低体重傾向を“危険なレベル”と考えています。

食事量が不足しているために、「低栄養→筋肉量低下→肺炎・骨折→入院→さらに筋量低下」という悪循環を自分から招き入れてしまっているのです。

「理想のBMI」は30?59歳のデータに基づいている

低体重のリスクがピンとこない方もいるかもしれませんが、高齢者の場合、「やせていると死亡リスクが高く、太っていると死亡リスクが低くなる」ことが多くの研究で明らかになっています。

アメリカで行なわれた研究でも、高齢者の死亡リスクはBMIが低くなるほど高まり、高齢者のBMIは27のちょい太めくらいが最も死亡リスクが低いとわかっています。

BMI27ということは、つまり肥満(1度)ということになるのですが、高齢者の場合、標準体型(BMI22)の人と比べて死亡リスクが29%低下することが報告されています。

高齢者の場合、かなりの肥満であるBMI40の人でさえ、標準体型の人と死亡リスクがほぼ同じなのは驚きですね。

「あれ? BMIって22が最も健康にいいはずなのに、なんで?」と思う人もいるかもしれません。実は、理想のBMIは、若者と高齢者とでは別々に考えたほうがいいのです。

というのも、BMI22というのは、30歳から59歳の5000人を対象にした健診データから導き出された指数、つまり高齢者がまったくカウントされていないのです。

言わば、「高齢者抜き」でつくられた体格指標であり、そのため「22がいちばんいい」というのは高齢者には当てはまらないと考えたほうがいいんですね。

年をとったら「おやつ」は好きなように食べる

ここで「間食」についても、お話ししておきましょう。高齢者は「間食」をしてもいいのでしょうか?

答えはイエス。

特に食事量の少ない高齢者の場合、1日3食、白米をしっかり食べるというスタイルよりは、白米は多少控えめでも3食のおかずを多めに食べて、間食やデザートも多めにとるというスタイルのほうが、トータルでしっかりカロリーを摂れると思います。

だから、ちょっと小腹が空いたときにはお菓子でもみかんでも、気にせずお好きなものをつまんでください。

若い時期には、スナック菓子などを食べ過ぎて、注意されることもあったかもしれませんが、それはあくまで若いときの話。

高齢になってからは、カロリーが高くて太りやすいのはかえって好都合というもの。

だから、ポテトチップス、おせんべい、おかき、かりんとう……好きなものを好きに食べても別に問題ありません。

「太っちゃうから」甘いものをもう我慢しなくていい

きっと、お菓子類が好きな方にとっては、なんでも気兼ねなく食べられるのは夢のような状況なのかもしれませんね。

ただ、間食でこういったものを多く食べていると、カロリーは摂れても、たんぱく質は不足しがちになるので、肉や魚、卵、大豆などのたんぱく質は、3度の食事できちんと摂るように留意してください。

おやつと言えば、「甘いもの」に目がない方も多いと思います。

ケーキ、シュークリーム、エクレア、プリン、大福、どらやき、おまんじゅう……こういったスイーツも、高齢者は好きに食べて構いません。

高齢とはいえ現役並みに元気な人で、血糖値が高めの人はもちろんまだまだ注意が必要ですが、衰えを自覚するようになってきたら、血糖値よりも、しっかり食べて体重を守ることを優先したほうがよいと思います。

糖尿病で治療中の方は、もちろん血糖コントロールを無視していいというわけではありませんが、低体重の方は、「血糖を上げないために食べない」ではなく、食べたい量に薬やインスリンを合わせていくという考え方もあります。

選び放題のコンビニスイーツを活用する

ちなみに、最近はコンビニのスイーツがたいへん充実してきています。

たとえば、プリンひとつをとってもたくさんの種類があり、生クリームが載ったもの、フルーツが載ったもの、高級な材料を使ったものなど、好みに合わせていろいろ選べるようになっています。

もちろん自分の好みにあったものを選択すればよいのですが、食事の量が少なく体重がなかなか増えない…そんな人は、小さくてもカロリーが高めのものをチョイスするとよいでしょう。

あくまで参考ですが、おまんじゅうのような和菓子よりも、ケーキやシュークリームのような洋菓子のほうが、生クリームなどの乳脂肪が含まれている分カロリーが高い傾向があります。

ですから、もし迷ったなら、和菓子よりも洋菓子を選ぶほうがいいかもしれません。

おやつは何歳になっても毎日の楽しみ、という人も少なくないと思います。

太ってはいけない、という呪縛がなくなったいま、いろんなスイーツを試してみながら、日々の「食べる喜び」を満喫してはいかがでしょうか。

食欲がないときは「チョコとアイス」がおすすめなワケ

持病や体調不良があると、病気によってエネルギーを消耗するため、より多くのカロリーを摂らなくてはなりません。

「今日はちょっと熱っぽいな」「どうも体調がすぐれないな」といったときほど、がんばってより多くのカロリーを摂取しなくてはならないのです。

そうはいっても、どうしても食欲が湧かないというときはありますよね。

いつものように食べられないときは、どうしたらいいのでしょうか。

いちばん避けるべきは食事を抜いてしまうこと。なので、少量でもいいから、食べられそうなものを食べられるだけ食べてください。

そして、できるだけ「少量でもカロリーが高いもの」を口に入れるようにするとよいでしょう。

私のおすすめは、チョコレートとアイスクリームです。両方とも少量で高いカロリーを確保することができます。

板チョコは1枚で約400kcal、半分でも200kcal摂れます。乳脂肪分の多いアイスクリームのミニカップはだいたい260~300kcal。これらを食べれば、そこそこのカロリーを摂れるのです。

特にアイスクリームはすぐに口内で溶けて舌やのどが冷たく感じるので、熱っぽいときでものどに痛みがあるときでも、食べやすいと思います。

甘いもの嫌いなら「ナッツ」をつまむ

また、スナック系だとかりんとうが少量で高カロリー。100g食べると約450kcal摂ることができます。

食欲がないときでも「甘いものなら食べられそう」という人は、こういった食品を積極的に活用していくといいのではないでしょうか。

甘いものがあまり好きでないなら、ナッツ類を食べるのもおすすめです。

アーモンドやピーナッツも10粒で60kcal。カシューナッツ、ピスタチオ、くるみなど、ナッツ類はどれもカロリーが高めです。ちょこちょこつまめば、けっこうなカロリーを摂れることになります。

高齢になったら、どんなに食欲がなくても、こういった「熱」や「力」になりそうなものを少しでも口に放り込んでおくことが重要なのです。

「体調が悪い→おかゆ」は黄金の方程式ではない

逆に、実はあまりおすすめできないのが「おかゆ」です。

おかゆではカロリーが決定的に足りません。

普通に炊いたごはんは一膳約200kcalですが、おかゆだと半分の約100kcalになってしまいます。

熱が出て体温が1度上がると、それだけで約200kcalの熱量が消耗されます。

2度上がれば約400kcalです。

つまり、おかゆの100kcalでは、この熱が上がって消耗した分のカロリーすらまかなえないことになってしまいます。

こんな状態を高齢者が何日も続けていたら、風邪をひいて寝込んでいるうちに、低栄養状態になってしまいかねません。

もちろん、食事が喉を通らないほど具合が悪いときは、水分をとったりおかゆを食べるので精いっぱい……ということもあると思います。

ただ、もし食べられるのであれば、これからは「食欲がない→おかゆ」という発想を捨て、新たな健康常識として「食欲がない→チョコレート&アイスクリーム」を身につけるようにしてみてください。

在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい 佐々木淳(著) 飛鳥新社 (2021/12/7) 1,400円

65歳を超えたら、BMI25~30の「ぽっちゃり体型」が正解!

あなたは、流行りの断食やダイエットをしていませんか?

そもそも、日本の高齢者は「やせ過ぎ」です。

少食や糖質制限などで体重を減らすと、高齢者にとっていちばん危険な「フレイル(虚弱)」を招くことに。

さらに「肺炎」と「骨折」のリスクも高めます。

体重が少ないと、万が一入院してしまったとき大きな危険が伴います。

やせている人は、太っている人に比べて退院後の死亡リスクが高いことがわかりました。

生きることは食べること。

食事を楽しみ、しっかり食べることで体重と体力をつけていつまでも「自分らしく」生きてください。

「痩せてきた高齢の親のために買いました。好きなものを食べさせます! 」(42歳・男性)

「80代の親と同居しています。両親とも少食で病気やケガが多く、困っていました。カロリーの高いものをしっかり食べさせているうちに元気になり、いまは入院ゼロです」(55歳・女性)

「高齢者の食事、薬について、目からウロコの情報でした。80代の方の食事指導に生かします」(72歳・女性)

「毎日歩いています。血圧の薬も飲んでおり、しょっちゅうおなかが空くのですが、ダイエットと思って食べるのを控えていました。たくさん食べて、たくさん動きます」(75歳・女性)

「マクドナルドや吉野家がいいなんて、画期的! メタボだのなんだの言われて食を控えている人は多い。私はまだ50代だが、高齢になったらガンガン食べよう」(56歳・男性)

「80歳をすぎて食欲が出てきたが、太ることに抵抗があった。この本を読んで、食べていいんだとわかった」(81歳・男性)

著者について
佐々木淳(ささき・じゅん)
医療法人社団悠翔会理事長・診療部長
1973年京都市生まれ。手塚治虫の『ブラック・ジャック』に感化され医師を志す。1998年筑波大学医学専門学群を卒業後、社会福祉法人三井記念病院に内科研修医として入職。消化器内科に進み、おもに肝腫瘍のラジオ波焼灼療法などに関わる。2004年東京大学大学院医学系研究科博士課程に進学。大学院在学中のアルバイトで在宅医療に出会う。「人は病気が治らなくても、幸せに生きていける」という事実に衝撃を受け、在宅医療にのめり込む。2006年大学院を退学し在宅療養支援診療所を開設。2008年法人化し、現職。2021年 内閣府規制改革推進会議専門委員。 現在、首都圏ならびに沖縄県(南風原町)に全18クリニックを展開。約6000名の在宅患者さんへ24時間対応の在宅総合診療を行なっている。

読者の声

「この本のポイントは「あとがき」にある「身体の衰えのサインが出てきたら、健康習慣をギアチェンジする」「老化を防ぐのではなく、老化に伴うリスクを減らす」のように、若い人と高齢者では健康に関する考え方を変えるべきだということ。
これまでの健康本とはかなり方向性が違い、それだけに発見の多い本です。ただし、「『マクドナルド』『吉野家』は理想的な食事」のように、あまりにもこれまでの常識とはかけ離れた意見も多いので、特に糖質制限を実行している人などは戸惑うことも多いでしょう。
最終的には自己責任という前提の上で、高齢者である人、これから高齢者になる人は一読の価値がある本だと思います。」

「考えが変わりました。ガンガン食べようと思います。高齢者はこの本を読んで良く考え、実践することをお勧めします。」

「年を重ねるほど、フレイルの怖さはヒシヒシと感じていました。この本では高齢者の食事の仕方は、若い頃のそれとは違うということを、理論的に分かりやすく書かれています。この本の根底にある優しさが溢れて伝わってきます。」

 



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