なぜ日本の車メーカーは「Gクラス」のような四角いSUVを造らない?その理由に納得
イラン・パーレビ国王のリクエストにより、国境地帯を警備できるオールパーパスなクルマとして開発されたメルセデス・ベンツ「Gクラス」。
発売当初は「ゲレンデバーゲン」という名で売られていたのは周知の通りです。
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発売から40年経つも未だ大人気の”ゲレンデ”
悪路走破性、堅牢性の高さから、NATO軍をはじめとする各国軍隊に制式車両として採用されるという実績を持つクルマでもあります。
初代発売から40年以上が経過するモデルですが、2回のマイナーチェンジを経ても基本的なデザインは変わっていません。
運転時の車両感覚の掴みやすさ、見切りの良さを考えてデザインされたスクエアなボディは無骨以外のなにものでもありませんが、日本でもっとも売れているベンツと言えるでしょう。
流麗なラインのSUVが多い中で、無骨さが最高の魅力になっているのではないでしょうか。
スクエアボディの国産SUV、なぜ増えない?
では、日本のメーカーはなぜこのようなカタチのSUVを造らないのでしょうか。
2018年にスズキは、4代目「ジムニー」を発売しましたが、そのスクエアなデザインはGクラスにそっくりだったことから、海外メディアから「ベビーG」の愛称が付けられました。
丸みを帯びた3代目モデルから一転し、スクエアなデザインを纏った現行型ジムニーは、従来とは違うユーザー層から新鮮味を評価され、瞬く間に大ヒットモデルになりました。
しかし、スズキのデザイナーは何もGクラスを模倣したわけではありません。
オフロード4WDとしての性能、道具として機能美を追求した結果、現在のカタチになったのです。
ですがこのデザインには、現代のクルマに不可欠な安全性能という点で、大変な苦労が隠されています。
Eはモデルチェンジしたばっかりだから、一個前のモデルの中古じゃないかな~?やっぱりセダンなんだね。個人的にワンちゃんいるならゲレンデバーゲンまでがんばれ!と思ったけどwww(1300万円~) pic.twitter.com/0fEZ6Widci
— FUFU(ふーふ-) (@O88juwGnvr2iv0X) May 22, 2021
スクエアボディ特有の開発者の苦悩も
角張ったボディでは歩行者保護が難しい
安全性能という点でメーカーが苦労しているのが、歩行者保護性能です。
歩行者と車両がぶつかってしまった時に、できるだけ人体に影響を与えない形状や材質が求められるのです。
Gクラスやジムニーのようなスクエアな形状の場合、その性能の確保が非常に大変です。
まず、前部の投影面が大きいため、ぶつかった時に歩行者を大きく跳ね飛ばしてしまう可能性が高いからです。
ウェッジシェープのSUVであれば、バンパーで足元をすくい、ボンネット、フロントガラス、ルーフを滑らすようにして人体を後方へ導くことができますが、スクエアボディだとそうはいきません。
さらに、ラダーフレームという鋼鉄製ハシゴ形フレームを内包するオフロード4WDは、頑丈な反面、歩行者にぶつかった時に大きな衝撃を加えることになります。
ジムニーもGクラスもできる限りの安全性能を確保しているが…
ジムニーのバンパーを観察すると分かりますが、まず3面で構成されており、それぞれが違う角度を向いています。
さらに、素材は柔らかい樹脂でできており、ある程度の衝撃吸収性が想像できます。
ボンネット上も凹凸が少なく、ワイパー以外は大きな突起物がなく、できる限り人体を後方に流す工夫がなされていることが理解できます。
ランドクルーザー70は1984年にデビューするも、2004年に国内販売を終了した
ちなみに、同じようなスクエアなデザインで大人気のランドクルーザー70系は、歩行者保護などいくつかの安全性能の確保が難しかったため、国内での継続的な販売を断念したという背景があります。
一方のGクラスは2018年に登場した3代目で、超高張力+アルミ製ボディを採用したり、フロントグリル、フロントバンパーのデザイン、素材を変更することで、こうした性能を確保しています。
これは高額なプライスで販売できるGクラスゆえであるとも言え、そうでないモデルにはなかなかできないこととも言えます。
また3代目とは言ってもW463という型式は2代目と同じで、新型車ではなくビッグマイナーチェンジという扱いが、性能条件クリアの敷居を低くしているという見方もあります。
現行Gクラスの新車車両価格は1,251万円から。中古市場ではそれ以上の高値がつくことも珍しくない
スクエアなボディは燃費や空力面でも不利に
安全性能に加えて開発者が苦労しているのが、環境性能や操縦安定性ではないでしょうか。
スクエアなボディは空力的に不利で、それは燃費の悪化に繋がります。
また車両後部に乱流が発生しやすいため、操縦性にも影響が出ます。
Gクラスもジムニーも、レインガーターの後部を上げることなどの対策によって、空力性能を改善しています。
ジムニーで行く!
夏の田んぼ巡り! pic.twitter.com/yWlqqZN2rH— はる (@haru_ja11) August 7, 2022
Gクラスのような新型車を造るのは非常に難しい
こうした様々な点を考えていくと、新たにGクラスのようなクルマを造るのは非常に難しいと言えます。
Gクラスと並んで、スクエアなボディで人気のあるクルマにランドローバー「ディフェンダー」がありますが、2020年のフルモデルチェンジで“似て非なる”クルマになってしまいました。
オールドディフェンダーファンには新型のデザインを批判する人も多く、イギリスのコアなファンの中には旧型ソックリのクルマを造るブランドを立ち上げてしまった人がいるくらいです。
Gクラスもここ数年でフルモデルチェンジが予定されていますが、モノコックボディ化し、ディフェンダーのような進化をするのではないかと見られています。
となると、現在のスクエアなデザインとヘビーデューティな雰囲気がどこまで残るのかは分かりません。
そう考えると、現行型ジムニーがあのデザインを実現したことは、「よくぞやった!」と賞賛せざるを得ません。