コーヒーは健康に良いの?適量飲めば病気リスクが減るよ

コーヒーを「適量飲めば病気リスク減る」は本当か

全米最大規模の老年医学科を擁するNYのマウントサイナイ医科大学病院で、日々高齢者診療にあたる米国老年医学専門医、山田悠史氏。

この高齢化社会において人々が切望する“健康で自立した老後”を叶える方法を、最新のエビデンスから解き明かした『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』を上梓した山田氏が、コーヒー好きなら見逃せない、コーヒーと健康の関連性を紹介します。

アルツハイマー病や糖尿病のリスクが減少

コーヒー好きに朗報を届けたい。そんな思いで、今回はコーヒーのポテンシャルと気になる「副作用」についてご紹介したいと思います。

実は、著者自身もコーヒーを1日に2~3杯は飲むので、コーヒーにまつわる研究はいつも気になり、率先して調べています。

果たして、コーヒーは体に良いのか、それとも悪いのか。さまざまな研究を見ていきましょう。

コーヒーが「体に良い」とする、そもそもの根拠として、コーヒーを飲む習慣といくつかの病気のリスク減少との間に関連性が示されています。

その「いくつかの病気」としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、2型糖尿病などが挙げられます。

コーヒーを飲む習慣があると、これらの病気のリスクが減る可能性があるというのです。

ただ、仮にこれらの病気のリスクを減らす効果があるとして、実際問題なぜこれらの病気を減らすのかといったことは、残念ながら何もわかっていません。

また、死亡リスクの減少との関連も報告されています。

例えば、17の研究をまとめたメタ分析という手法を用いた論文では、1日3?4杯のコーヒーが16%の死亡リスク減少と関連していたと報告しています。

このように、コーヒーには、健康につながる役割がある可能性があります。

ただし、因果関係まではわかっておらず、コーヒーを飲むことで本当にこれらの病気を減らせるかまではまだわかっていないことに注意も必要です。

コーヒーを飲む習慣のある人には、何か別の理由があって、それが健康につながっている可能性などが否定できないのです。

うつ病にも効果がありそう

さらに、コーヒーには身体の健康だけではなく、心の健康への効果というのも期待されています。

例えば、うつ病予防の効果です。

うつ病の予防効果を示唆した研究として、うつ症状のない、さまざまなカフェイン摂取量の女性約5万人を対象に、10年間のカフェイン摂取量やその他の食事摂取の変化を追跡調査したものがあります。

この調査では、全体で2607人にうつ病の発症が確認され、そのうつ病を発症した人たちのカフェイン摂取量の傾向が調べられました。

すると、週に1杯以下のカフェイン入りコーヒーを飲む女性と比較して、1日に2~3杯のカフェインを摂取する女性は、うつ病のリスクが減少するという関連性が確認できました。

一方、カフェインレスコーヒー、カフェイン入りの紅茶、チョコレートの摂取についても関連性が調べられましたが、それらとうつ病のリスクとは関連は見られませんでした。

つまり、カフェイン入りのコーヒーにこそ効果があるかもしれないのです。

これらの結果から、もしかすると少なくとも女性は、カフェイン入りのコーヒーを飲む習慣があるほうがうつ病リスクが減る可能性があります。

しかし、この記事を読んでいるのがもし男性であれば、残念ながら男性についてはこの研究からは何も言えないということになります。

このように、コーヒーには、心の健康維持という効果も期待されています。

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また、「健康」とは必ずしも結びつかないかもしれませんが、コーヒーを飲むことで、目が覚めたり、エネルギーが湧き起こったり、集中力が上がったりといった影響がもたらされるメリットも知られています。

そしてこのメリットこそが、おそらく多くの人がコーヒーを飲み始める理由の一つでしょう。

一方で、コーヒーによる「副作用」にはどんなものがあるのでしょうか。

コーヒーの副作用は摂取量による

例えば、カフェインを短期的に摂取すると、頭痛、不安、手のふるえ、動悸や不眠などの副作用があることがよく知られています。

また、長期的な摂取では、副作用として不安障害との関連性を示唆する報告もありますが、因果関係までは明らかになっていません。

コーヒーを飲むことは頻尿の症状とも関連するため、男性で前立腺肥大がある場合、その症状を悪化させる可能性があります。

私が診察した前立腺肥大の薬を内服中の患者さんの何人かには、実は日々飲んでいるコーヒーが良くなかったというケースがあり、意外な落とし穴かもしれません。

また、「コーヒーには発がん作用がある」という説を聞いたことがある方もいるでしょう。

焙煎したコーヒー豆には、アクリルアミドという、動物に発がん性を持つ物質が含まれるため、そのような懸念が生まれています。

ただ、これまでがんの発症とコーヒー摂取の関連性を調べた研究では、がん発症との関連性は認められておらず、人間への発がんリスクの可能性は低いと結論づけられています。

むしろ、コーヒーを摂取したほうががん予防に働くかもしれないと示唆した研究もあります。

カフェインの安全な摂取量は、1日400mgまでとされており、これは一般的なコーヒーカップでコーヒー3~4杯程度にあたる量です。

これを超えた場合に、先ほど紹介した副作用のリスクが増加します。

また、まれな副作用として、心臓の不整脈の可能性なども指摘されています。

特に、心臓に持病のある方でリスクが増加する可能性が指摘されており、注意が必要です。

逆に言えば、安全な摂取量の範囲内であれば、リスクは極めて少ないと言えるでしょう。

「コーヒー離脱症状」とは

また、「毎日欠かさず飲む」という方には、突然中断した時に起こる「離脱症状」も報告されています。

この離脱症状は、コーヒー1杯程度でも毎日飲んでいれば起こりうることが知られており、日々の摂取量が多ければ多いほど症状が強くなる傾向も報告されています。

具体的な症状としては、頭痛やだるさ、眠気や集中力低下といった症状で、いわゆる「風邪症状」をきたすこともあります。

通常、中断して、24時間程度で症状が出始め、1?2日程度でピークを迎え、最大で9日まで続くことがあると報告されています。

再度カフェイン摂取をすると、30?60分で症状が消えるので、それで「離脱症状だった」と気がつかれることもあります。

このようなことが経験される場合には、徐々に摂取量を減らすのが良いと考えられています。

例えば、1週間程度かけて徐々に摂取量を減らしていくようなやり方です。

以上のことから、コーヒーを飲まないほうが良いという理由も、コーヒーを飲んだほうが良いという強い理由もないというのが現状ですが、どちらかと言えば健康につながる可能性を多く指摘されており、「副作用」は量に依存するものが多いことから、副作用の出ない範囲で、適量を楽しむことには問題がないと考えられます。

そして、もしかすると「プラスアルファ」の健康も得られるのかもしれません。

仕事がうまくいかず落ち込んでしまった。

そんな日に「1杯コーヒーでも」というのは体にも心にも良い選択なのかもしれません。



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