チャップリンが好きならヒトラー全盛期に作られた「独裁者」は見ておくべき
THE GREAT DICTATOR, right: Charlie Chaplin, 1940.

ヒトラーの全盛期、笑いを武器に立ち向かった「独裁者」 

人類史上に輝く名作を是非見てほしい

モダンタイムスも傑作

チャップリンは1932年に世界旅行の最終目的地として日本を訪れました。

歌舞伎や相撲を愛で海老の天ぷらを30尾も食べるなど日本文化を大いに楽しんだのですが、同時に彼は五・一五事件の標的の一人として命を狙われました。

日本の軍国主義を肌で感じ、世界の危機を深く考えるようになります。

そして「モダン・タイムス」(36年)を製作。

工場での非人間的な労働のために正気を失くしたチャップリンは、父を失った少女と出会い、手を携えて懸命に生きようとするが…。

36年の時点で、機械文明の非人間性を予言した問題作にして、チャップリン映画の中でも最高におかしい傑作コメディーです。

チャーリーが巨大な歯車に巻き込まれる有名なシーン、輝くばかりに美しいヒロインのポーレット・ゴダード、チャップリンが初めて肉声を聞かせた「ティティナ」の歌、

そして自作の名曲「スマイル」に乗せて、2人が歩き去る伝説的なラストシーン。

現代社会の不条理の中であくまで自由を求め希望を胸に歩くことの大切さを説きます。

「独裁者」はヒトラー全盛期に作られた

さて世界で最も愛された喜劇王と、最も憎まれた独裁者ヒトラーはわずか4日違いで生まれ、同じちょびひげを生やしました。

「独裁者」(40年)はヒトラーの全盛期に、笑いを武器に真っ向から立ち向かった傑作です。

「独裁者」で笑い者にされ、ヒトラーの演説は激減した。笑いは独裁政治への武器になることを教えてくれる

独裁者ヒンケルとユダヤ人の理髪師はたまたま瓜二つでした(チャップリンの2役)。

ヒンケルが世界征服の狂気につかれて隣国への侵略を進める中、ひょんなことから理髪師は独裁者と間違われて大群衆を前に演説をしなければならなくなります。

狂気につかれた独裁者が地球儀と戯れるダンスシーンやひげそりの爆笑シーンなど、映画史に残る名場面の連続。

制作には反対も…

チャップリンはドイツからの妨害やアメリカ政財界の反対、マスコミからの非難の中でも信念を貫き、作品を作り上げました。

自由と平和を呼びかけるラストの演説は時代を超えて今も響き渡るのです。

翻って2022年、ロシアによるウクライナ侵攻の最中、ゼレンスキー大統領は「今こそ新たなチャップリンが必要だ」と訴えました。

混迷を深める状況には、ユーモアこそ最強の武器になるでしょう。

今回の映画祭でぜひ見ていただきたい1本です。

フォーエバー・チャップリン 

11月3~24日の東京・角川シネマ有楽町ほか、全国主要都市の映画館で開催。角川シネマ有楽町ではトークイベント付き上映も開催。開催初日の11月3日は、オープニングとなる「独裁者」の上映後に大野裕之が、6日には字幕翻訳家の戸田奈津子、19日は羽佐間道夫と大野、23日はフリーアナウンサーの笠井信輔がそれぞれ登壇し、チャップリンへの思いを語る。

詳細は公式サイト

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