新幹線予約「EXサービス」が進化も常連客、非常連客は置き去りに

新幹線予約「EXサービス」進化も その利便性ゆえに生まれる“非・常連客”への冷遇

東海道・山陽・九州新幹線のインターネット予約・チケットレス乗車サービス「EXサービス(エクスプレス予約、スマートEX)」が話題になっています。

今秋から新サービス

今秋から新幹線の予約が1年先まで可能になり、当日まで乗車する新幹線を変更可能な旅行商品も提供されます。

今後、新幹線や特急列車を利用する際には、チケットレスでの乗車は当たり前になりそうです。

EXサービスでは、今秋から以下の新サービスが提供される予定。

・新幹線沿線のホテルや目的地までの交通機関の予約・決済を新幹線と一緒に行える(EX-MaaS(仮称))

・EXサービスを通じて、新幹線とホテルや観光プランなどを組み合わせた旅行商品。インターネットで直前まで乗車する新幹線の変更が可能になる(EXダイナミックパッケージ(仮称))。

・予約は乗車日の1年前から可能。時刻表未定のため、仮予約から1ヶ月前に列車・座席が確定する。

サービスの利便性が高まる。ただ、やや気になるのは、新サービスの導入に伴い、料金体系も改定されることだ。

新サービス導入に伴い「EX予約サービス」の運賃が見直され、普通車指定席・グリーン車の割り引きが減額されます。

非常に役立つサービス

新たな料金は次のようになります。

●東京~名古屋
・所定運賃:1万1300円
・現行:1万310円
・改定:1万880円

●東京~新大阪
・所定運賃:1万4720円
・現行:1万3620円
・改定:1万4230円

チケットレス乗車の利点は、紙の切符よりも割り引きになること。

まだ正規運賃に比べると割安だが、新サービスの導入に合わせた値上げに見えます。

ただ、単純な値上げかといえばそうともいいがたいものがあります。

今回の運賃見直しでは早めに乗車券を予約すると大幅に料金が割り引きになるサービスも提供されるからです。

そのサービスとは「EX早特28ワイド」。

東京~新大阪間の「のぞみ」普通車指定席を対象にしたもので、乗車日の28日前までに予約をすれば大幅に料金が割り引きになりまする。

通常期の場合は、料金は次のようになります。

・東京~名古屋:9700円
・東京~新大阪:1万2240円

現在、もっとも割引率の高い「EX早特21ワイド」は21日前までの予約で、次のような料金設定になっています。

・東京~名古屋:9800円
・東京~新大阪:1万2370円

以前から、JR各社ではインターネットを使って早めに切符を予約すると料金が大幅に割り引きかれるサービスを導入しています。

事前にスケジュールがわかっている場合には、非常に役立つサービスであるし、拡充は歓迎されるでしょう。

揺るがないJRのチケットレス主流化

近年、JR各社ではチケットレス乗車の利用を促すための施策を推し進めています。

一方、従来発売されていた割引率の高い切符は次々と廃止されています。

2021年には東北・上越新幹線などで、2022年には東海道新幹線で、従来発売されてきた新幹線回数券が廃止されました。

在来線でも、多くの人が利用していた「あずさ回数券」は2019年に廃止されています。

これまでの賢い利用法は、駅周辺の金券ショップでバラ売りされている回数券を購入して運賃を安くすることでした。

そうした乗客にとって、回数券の廃止はいまだ「改悪」とも受け止められています。

それでも、JRのチケットレス乗車主流化の動きは揺るぎません。

利用者が低迷するなか、

・運賃の値上げを行わずに人件費を抑制する
・駅設備やオペレーションに手を加えることなくスムーズな乗車を促す

方法として重視されているからです。

例えば、JR東海はリニア中央新幹線の開通後、乗り換え客が名古屋駅で増えると予想しています。

そこでスムーズな移動を促すため、チケットレス乗車をできるだけ早く普及させたい意図があるのです。

また、運賃面以外で見るとチケットレス乗車には大きな利点があります。

乗車直前までほぼ例外なく列車・座席変更が可能となります。

運賃より

「乗りたいときに乗れる」

を至上と考えるなら、チケットレス乗車の普及は間違いなく便利。

では、なにが問題なのでしょうか。

それは、JR各社のやり方が性急すぎて乗客が対応できていないから。

JR東日本が2021年に示した資料では、こんな目標値が示されています。

●えきねっとによる取扱率
・2020年度:約25%
・2025年度目標:60%

●自社新幹線のチケットレス利用率
・2020年度:約30%
・2025年度目標:70%

この目標値を達成するためか、JR東日本管内では、窓口が縮小され「えきねっと」を使った事前購入やチケットレス乗車が推奨されています。

ただ、これまで窓口で全国の切符が購入できていたのに比べて煩雑です。

JR各社のサービスには、購入できるもの・できないものがあるのです。

先進性が生むトラブル

例えば、「えきねっと」のウェブサイトでは全国の新幹線と特急列車の切符を購入し、券売機で発券できます。

しかし、「えきねっと」のアプリでは東海道新幹線の申し込みはできません。

現状、全ての人がチケットレス乗車やネット購入システムを熟知していないままでは「利便性が悪化している」と指摘されるのは否めないでしょう。

従来の、窓口で「○○まで大人1枚」とは大違いなのです。

年に数度しか新幹線を利用しない人に、「これからは切符はアプリかウェブサイトで買ってください。まず、アカウントを作ってクレジットカードを登録」と促すのは至難の業です。

こうした状況は、スマートフォン上で単一のアプリで全ての切符が購入できる状況が生まれるまでは続くでしょう。

将来的に誰もが、チケットレスサービスを習熟した状況になれば「EX-MaaS(仮称)」の先進性も評価されるようにはなります。

ただ、数年の間にはならないでしょう。

チケットレス乗車普及のためには、全ての切符の購入がひとつのアプリで完結できるシステムが望まれます。

ネットの声

「窓口は減っていくと思う。ネット発券に慣れると、窓口で買うのが煩わしくなる。数十年前は、短距離の切符も窓口で買っていた。でも今は、自動券売機で購入どころかIC乗車券で切符を買う必要すらない。乗客が「便利だな」と思ってくれる状況作りが大切だと考える。」

「新幹線だけではなく在来線も回数券が廃止されました。ICカードで同様の割引があると謳っていましたが全く違います。回数券は有効期限3ヶ月で11回分利用できましたし、家族で共用できましたが、ICだと個人で暦月の1ヶ月で10回以上利用しないと割引にならないようです。週1~2回定期的に利用していますが全く割引がなくなってしまいました。そこへバリアフリー料金という名の一律値上げ。そこそこな金額の距離ですので痛手です。」

「JR東海がチケットレス化を進めたいのは、例えば東日本の各駅で発券した場合などは手数料がさっ引かれてしまうことも大きい。紙の乗車券だと市内とか区内まで有効だし、他の特急に乗り継ぎする場合は割引があったりするが、ICだと何の恩恵もない。なんとか改善してもらえんかね?」

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