「切り裂きジャックに殺された5人は売春婦」とされてきたが…100年以上経った今明らかになる、女たちの“驚きの真実”
自分がこうだと思い込んでいたものが実は違ったと分かった時、驚きとともに、なぜそこを疑いもせず過ごしてきたのか不思議になります。
目次
1888年のイギリス・ロンドンで起きた、ある有名な連続殺人事件
犯人は、「切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)」。
そして、喉をかき切られた5人の女性たちは、いずれも「売春婦」だと“されてきました”。
ところが驚くことに、その大前提が違っていたのです。
被害者全員が「売春婦だったと示唆する確固たる証拠はない」というのです。
本書は、切り裂きジャックの正体を推理するものではありません。
これまで「ただの売春婦」としか認識されていなかった被害者5人の人生を、検死審問をはじめ、当時のさまざまな記録から丹念に拾い上げ、まとめたものです。
お待たせいたしました。本日のウミガメのスープ『切り裂きジャック』でございます。#ウミガメのスープ #水平思考クイズ #謎解き pic.twitter.com/3xuayS9d03
— オトシゴラボ (@otoshigo_labo) November 27, 2022
社会の姿を浮き彫りに
かつては夫と子供に囲まれ、安定した暮らしを得ていた者もいました。
当たり前ですが彼女たちの人生はそれぞれです。
しかし、切り裂きジャックと思しき何者かに人生を突如終了させられたことだけが共通項かといえば、そうではありません。
5人のほとんどは労働者階級の家に生まれ、逆境の中で人生を開始したのです。
そして皆、死別やアルコール依存など、さまざまな事情から家族と離れ離れになり、貧困者が集まる地区のなかでも環境が劣悪で「地獄の最下層」とされるホワイトチャペルにたどり着きます。
事件当時、新聞各紙は、
「ホワイトチャペルのロッジングハウスは『名前以外実質的に売春宿』であり、そこに住む女性は、ごく少数を除いて全員売春婦だと繰り返し断言」
していたというのです。
そこから見えてくるのは、貧困者とは「怠惰で堕落した存在」という意識、
「『家のない者』と『売春婦』は、その道徳的欠陥においてまったく同一」という価値観。
そして当時、女性がどう見られ、扱われていたかという社会の姿です。
「私は売春婦に恨みがある。捕まるまで切り裂いてやる」
【イギリス猟奇殺人事件(1888年)】、ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック) pic.twitter.com/4WgGS7I06Y
— ◆マジキチ犯罪者の名言◆ (@mazikiti_hanzai) November 23, 2022
“殺されたのは、怠惰で貧しい、ふしだらな女たち”
配偶者からのDVは“しつけ”として許容されるべきものであり、また性交を拒んだり生意気な口をきいたりすることは許されません。
教育を受ける機会も、高い賃金を得られる仕事もほとんどなく、たとえどんな事情があろうと配偶者の元を去れば、女性の方がふしだらな社会不適合者とみなされるのです。
独身となれば、さらに屋根のある場所で寝るという環境を確保することすら難しくなり、命の危険やレイプ被害から身を守るために早急にパートナーを見つける必要に迫られます。
彼女たちは皆、ハードな時代を懸命に生きたひとりの人間だったのです。
にもかかわらず、社会が貼ったレッテルはこうでした。
“殺されたのは、怠惰で貧しい、ふしだらな女たち”。
事件が起きれば社会は、理由を探そうとします。
そうして作り上げられた物語には、時折偏見が紛れ込みます。
本書は、“事件の被害に遭った女性を貶める言説を流す”社会への抵抗の書であり、彼女たちの「尊厳」を取り戻そうとした著者の熱意の結晶でもあるのです。
【自動】19世紀末、社交期も終わりに近づいた頃。英国を震撼させる連続殺人事件が起こる?被害者になったのはいずれも娼婦。全員切り刻まれ子宮が奪われた姿で発見された?その被害者の無残な姿からいつしか犯人はこう呼ばれるようになる。『ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)』
— セバスチャン・ミカエリス (@Sebastian_M_bot) December 1, 2022
ネットの声
「そう、欧米の女性蔑視ってひどいんですよ。だからフェミニズムなり女性にも働く権利をとかいう活動が出るわけで。嘗ては夫婦になっても男性に許可を得ないと物が買えないとか、だから自分の自由になるお金を確保するために働きに出るわけです。
日本の女性が給与を夫から預かって旦那にお小遣いを渡し、家計は妻が回しますっていう話をした時にだったら、私はその権利が欲しくてフェミニズムをやっているのと言われたとか。
日本の場合は古事記にもあるように夫婦共同で国作りしましたが、キリスト教ではイブはアダムの肋骨からできた存在となってるせいか、とにかく女性を軽視する傾向が強い。アジア圏と欧米では全然前提となる考え方が変わっているように思います。」
「色々なことが明らかになっている。これから加速していくんだろうな。誰かにとって都合の良い事実でなく、本当の真実。本当に地球がデトックスしているようだ。崩壊という人もいるだろうけど、デトックスしなきゃ新鮮な、真の栄養素は取り組めないから、必然。」
「犯人の余りにも鮮やかに臓器を傷つけずに切り裂く手口から、ロンドン警察は医者か医学知識を持っ人物じゃ
ないかと、捜査を進めたそうです。やがて捜査線上に上がった容疑者が、事ともあろうか王室の一員が浮かび上がってしまい、容疑者が時の女王の甥っ子にあたり、逮捕を断念をしたとか、政府が容疑者をインド総督府に赴任させたとか、本で読んだ記憶があります。」
切り裂きジャックに殺されたのは誰か ハリー・ルーベンホールド (著), 篠儀直子 (翻訳) 青土社 (2022/9/24) 3,520円
5人の女性たちの語られざる人生
鎮魂と告発のノンフィクション
1888年ロンドン。
5人の女性たちが2か月のあいだに殺された。
この「切り裂きジャック」と呼ばれる殺人鬼がいまなお人びとの関心をひく一方で、被害者の5人の女性たちにはこれまで130年以上ものあいだ一筋の光もあてられてこなかった。
家庭内における暴力、社会的な差別、そして貧困や病から助かることのできない構造。
5人の女性たちのこれまで誰もひもとこうともしなかった人生を1頁ずつ丁寧にめくるとき、不合理に満ちた過酷な社会状況のなかで生きた彼女たちの姿が浮かび上がる。
連続殺人事件の被害者の人生をよみがえらせ、社会の暴力をつまびらかにする、気鋭による鬼気迫るノンフィクション。
(『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』の前半部分は『切り裂きジャックに殺されたのは誰か』と同じ時代だなあと、いまのわたしはタイミング的に思わざるをえないわけで、それに気づくと、何と申しましょうか、さらにいろいろなことを考えます)
— 篠儀直子/ Shinogi Naoko (@phyl705) November 30, 2022
「これまで「売春婦」と一からげにされてきた被害者たちの実像を、丹念な一次史料調査に基づいて明らかにする。ヴィクトリア朝史学のみならず、社会学的にも重要な一冊。ヴィクトリア朝時代の労働者や女性を取り巻く環境の厳しさや、飲酒の問題の根深さも浮き彫りにする。今後、切り裂きジャック事件について言及する者は必読の書となるであろう。」
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