高度人材だけを採る”日本型雇用”の大崩壊が始まった

いよいよ始まった「日本型雇用」の大崩壊…GMOが新卒採用で「高度人材だけを採る」意味

IT大手のGMOインターネットグループが、新卒採用に関して高度人材に絞る方針を決定しました。

パナソニックやホンダ、フジテレビ、博報堂など大手企業による希望退職の募集も増加しています。

コロナ後には日本型雇用の崩壊が一気に進むとの予想がありましたが、その動きが早くも顕在化しているようです。

新卒は高度人材だけでいい

GMOインターネットグループは2023年度から、新卒採用についてエンジニアや統計スペシャリスト、経営者候補など高度人材に絞って実施します。

年収は初年度から710万円とし、3年目以降は再評価した上で報酬を決定するということです。

日本における大卒の初任給は20万円(年収では240万円)程度なので、別格の扱いといってよいでしょう。

同社は中途採用にも力を入れており、採用者における新卒比率はあまり高くありませんが、高度人材に限定することで、新卒採用がさらに減る可能性が出てきました。

注目すべきなのは新卒を高度人材に絞る理由です。

同社は新型コロナウイルスの感染拡大当初、大手企業としてはいち早く在宅勤務への切り換えを進めるなど、業務のデジタル化に積極的な企業として知られています。

デジタル化による生産性の向上で得た利益を人材投資に回すことが狙いであり、採用数の減少も生産性向上でカバーする方針です。

近年、ITの驚異的な発達によって、単純な事務作業の多くをシステムに置き換える道筋が見えてきました。

メガバンク各行も大規模な人員の再配置や削減を実施していますが、背景となっているのはITによる業務の自動化です。

これまで企業が業務を遂行するには、中核業務を担う人材に加えて、付随する事務作業を担当する社員を大量に確保する必要がありました。

しかしAI(人工知能)を活用し、業務の自動化を進めれば、こうした社員を大幅に削減できます。

収益に貢献する部署に異動させれば、組織全体の収益も拡大し、最終的には賃金の上昇にもつながってくるでしょう。

一部の企業にとっては、機械化=人員削減となる可能性もあります。

同じ業務をより少ない人数で実施できれば、企業は総人件費を抑制できるので、経営者にとっては好都合でしょう。

デジタル化の進展によって、近い将来、事務職の数が大幅に減ることは多くの専門家が予想していましたが、ITの進化が予想以上に早く、しかもコロナ危機をきっかけに多くの企業が従来型業務プロセスの見直しを開始しました。

現時点ではオミクロン株への警戒が高まっている状況ですが、経済界はコロナ後に向けて急ピッチで動き出しています。

2022年は早期退職の募集やGMOのような採用方針の変更といったニュースが相次ぐでしょう。

社員数の削減と二極化が進む

では、コロナ後における日本の雇用はどうなっていくのでしょうか。

キーワードとなるのは「デジタル化による社員数の抑制」と「社員の二極化」です。

日本企業はデジタル化が遅れていることから、同じ金額を稼ぐために米国やドイツの1.5倍の社員数を必要としています。

日本企業の業務プロセスにはムダが多く、簡単に言ってしまえば日本企業が2個の商品を売っている時、米国企業やドイツ企業はすでに3個の商品を販売している状況なのです。

ムダな会議や紙での事務処理、ハンコの押印、根回し、社員間でのマウンティングなど行っている間に、諸外国では次々とビジネスを進めてしまうのです。

日本の場合、政府が事実上の生涯雇用を企業に求めていることも影響しています。

政府は2021年4月に改正高齢者雇用安定法を施行し、大手企業に対し70歳までの雇用について努力義務を課しました。

採用数を抑制せずに定年を延長すれば社員数と総人件費は増える一方となります。

この状況を回避するには採用抑制だけでは不十分であり、社員総数の削減が必須となります。

そして社員数削減の有力な手段となり得るのが、機械化と高度人材に限定した新卒採用、そして早期退職プログラムということになるのです。

年功序列の弊害で、過剰となった管理職が組織全体を肥大化させているという問題は以前から指摘されており、早期退職の募集が今後、増えることは多くのビジネスパーソンが予想していたはずです。

若年層のビジネスパーソンにとっても、専門性を身につけることの重要性は共通認識となっています。

しかしながら、企業にいれば何となく仕事を覚えることができた時代とは異なり、スキルを獲得するためには明確なキャリア戦略が求められるのです。

主体的に取り組める人とそうでない人との間には大きな差がつくことになり、それは社員間での格差拡大につながっていくでしょう。

専門性が高い分野も安心できない

今のところデジタル化による影響は、専門性が低く「とりあえず事務ができます」というビジネスパーソンに限定されているかもしれませんが、時代はさらに先に進もうとしています。

従来の基準では専門性が高いと思われていた分野にも、徐々にAI化の波が押し寄せているからです。

米グーグルの研究グループは、AIを活用することで、人間の設計者が数カ月かける必要があった回路配置を6時間で生成できる可能性があるという論文を発表しました。

半導体の設計には勘も含めた職人技が必要とされ、すべてを自動化するのは困難ですが、AIの導入で回路設計作業を大幅に短縮できるのは間違いありません。

こうしたAI技術はソフトウェア開発の分野でも応用が進められています。

システムに実装するプログラムを自動生成する技術は近年、急速に発達しており、簡単なコードであれば、AIが自動的に生成できるようになってきました。

プログラミングもセンスや勘がモノを言う分野であり、全ての作業をAIが置き換える可能性は限りなく低いのです。

しかし半導体の回路設計にせよプログラミングにせよ、AIの活用によってエンジニアの生産性が向上することは間違いなく、逆に「言われた作業」をこなすことしかできないエンジニアが不要になってくるのは時間の問題です。

当然のことながらこの動きは技術分野以外にも波及するでしょう。

情報を分析するアナリストや法律家、会計士など、付加価値が高いと思われていた業種においても、より高度にツールを使える人材と、単純作業にとどまる人材との間で二極化が進む可能性が高まっているのです。

結局のところ一連の自動化技術というのは、仕事全体を奪うのではなく、その業務に従事する人の総数を減らすという作用をもたらします。

GMOによる高度人材限定の採用は、その初期段階であり、一連の動きが先鋭化してくれば、今度は高度人材の中での選別が始まるでしょう。

ネットの声

「日本企業では暫く無理でしょうね。何故ならば、好き嫌いで決めた人事、忖度で出世した社員が多くを占める会社では、優秀ではなく従順さか採用目安になります。上司自体も無能な場合は、部下も無能です。その連鎖は終わる事はないでしょうね。」

「今の意思決定層は基本、思考停止のイエスマンでザ昭和な内需恩恵を自分の実績だと勘違いした無能ばかり。
高度人材を入れても使いこなせず、嫉妬し生意気だと吐き捨て、高度人材も他がすぐに見つかるだろうから離れてゆく。その頃には熟練ベテラン層は早期退職制度でリストラされていて誰も残っていない状況で過誤や事故のオンパレード。責任もうまく取れずじわじわと凋落していくんだろうな。」

「そもそも「高度人材」を見抜ける採用人事がいない。
自由解雇ができれば雇用のチャンスが増えるのでは?と思います。
とりあえず雇ってみてダメなら降格かクビ。
就活する側も働いてみないといい職場かどうかわからないし、いい人材かどうかなんてそもそも働いてみないとわからないでしょう。
面接や試験だけでいい人材選り分ける」って相当難しいことを人事がやらされてるなと思います。
バブル時代は雇った新人のうち2割使えればOKという感覚だったらしい。」

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