マイナポイント事業…申請は5割…保険証も紐付けるけどメリット見えず

マイナポイント、「手続き面倒」で申請まだ5割 保険証とひも付けると負担増え「メリット見えない」

政府がマイナンバーカード普及に向けて約1兆8000億円を投じた「マイナポイント事業」の申込率が、カード取得者全体の5割にとどまっています。

買い物金額に応じて電子決済サービスで使えるポイントを付与する仕組みですが、手続きの煩雑さに二の足を踏む人も少なくありません。

マイナポイント事業

マイナンバーカード取得者を対象に最大2万円分のポイントを付与。

2020年9月~21年12月の第1弾に続き、第2弾も今年1月から始まりました。

カード取得後に申し込むと、買い物金額に応じて最大5000円分(第1弾との合計)がもらえます。

6月30日からは、健康保険証とのひも付けや公金受取口座の登録をした人を対象に、各7500円分の申し込み受け付けとポイント付与を始めます。

申込期限は来年2月末。

いずれも今年9月までのカード申請が条件。

政府目標は「本年度末までにカード普及」

「カード取得に加え、ポイント申し込みの方法がわからないという相談は世代を問わず多い」。

東京都江東区の担当者はこう話します。

同区では今年1~4月、専用窓口などでのマイナポイントの申込支援件数は毎月100件ほどだそう。

政府は本年度末までにカードをほぼ全国民に普及させる目標を掲げています。

しかし、5月12日時点の交付率は44.3%(交付件数は約5600万枚。

そのうち、普及の推進役として期待されたポイント(最大5000円分)を申し込んだ人は、49.7%(約2700万件)にとどまっているのです。

政府は17日、計1万5000円分のポイントの申し込みについても付与を6月30日から始めると発表しました。

対象は9月末までにカードを申請した人が対象で、牧島かれんデジタル相は同日の会見で「お持ちでない方はぜひ早めに申請を」と呼びかけていました。

ポイントの申し込みにはスマートフォンやパソコンが必要なため、政府は自治体に専用パソコンを設けるよう通知。

全国約3万カ所の郵便局や携帯ショップなどでも対面支援をしており、今後は商業施設にも拡大するということです。

しかし、同事業は、カード普及だけでなく電子決済の利用拡大や消費喚起も狙ったため、ポイントが使えるのは電子決済サービスのみ。

現時点で約90のサービスから選べるが、手続きの複雑さが壁になっている可能性は否めません。

国会では、野党から「ポイントよりも信頼性を高めるのが重要だ」「(消費喚起など)一石何鳥も追わず、カードを持ってもらうことから一歩一歩前進するべきだ」などの新たな取り組みを求める指摘も上がっています。

なぜか負担増の「マイナ保険証」に与野党から疑問

マイナンバーカードを健康保険証として使う場合、患者の医療費負担が4月から増えました。

ポイント付与による普及拡大とはあべこべな政府の対応に、インターネット上では「メリットが見えない」などの批判が広がっています。

マイナンバーカードを健康保険証にひも付ける「マイナ保険証」の利用は2021年10月に始まりました。

今年4月の診療報酬改定に伴い、マイナ保険証を扱う医療機関では初診時70円(自己負担3割の場合21円)、再診時40円(同12円)が上乗せされたのです。

これらの医療機関では、マイナンバーとひも付けられていない従来の保険証を使っても、24年3月までは初診で30円(同9円)が余分にかかります。

また、薬局では月に一度、薬の調剤で30円(同9円)負担が増えました。

診療報酬を引き上げたのは、制度導入にかかる医療機関の事務費を補うためです。

国民民主党の矢田わか子参院議員は4月6日の参院決算委員会で「デジタル化すれば効率化して負担が減る。なぜ逆転現象が起こるのか」と指摘。

自民党の小野田紀美参院議員も「具体的なメリットがないと(カードは)普及しない」と訴えました。

議員らの疑問に、厚生労働省は「よりよい医療を受けられる利点があり、丁寧に広報したい」と答えます。

病院の事務費削減のほか、過去の薬剤情報や特定検診の結果を病院に提供することで患者への医療も向上するとしていますが、利用可能な病院や薬局は5月8日時点で18.7%と低迷しています。

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