紙の罠 日下三蔵 (編集)、都筑道夫 (著) 筑摩書房 (2019/11/8) 836円

都筑作品でも人気の“近藤・土方シリーズ”が遂に復活。

贋札作りをめぐり巻き起こる奇想天外アクション小説。

二転三転する物語の結末は予測不能。

「紙幣印刷用の透かし入り三椏和紙が、輸送途中に盗まれた。目的はもちろん、紙幣贋造だろう。とすると、犯人たちよりも先に、名人製版師の坂本剛太を押さえれば、大金を手にすることができるのではないか? そう考えた近藤・土方・沖田らは時に協力し合い、時に出し抜きながら、紙と坂本の確保に動き出す・・・・・・
騙し騙され二転三転する展開が軽快なドタバタ・ミステリー。アクション・ドラマの定番を茶化すパロディ精神が横溢する作品だが、謎解きのプロセスはきちんと書き込まれているし、緊迫したシーンを挿入することも忘れていない。最後のどんでん返しも含め、見かけよりも、ずっと真面目なミステリーなのである。」

「「夏の夜、灯火に群がる火取り虫のなかには、抜け目のない奴もいる・・・その火取り虫のような連中が、贋作というエサに飛びついて、そのエサの一人じめをもくろんでは、次々と身をほろぼしてゆく・・・・逆転、逆転、逆転、逆転、逆転・・・とサスペンスとナンセンスを織りまぜたオフ・ビート・アクション・ミステリの野心作」その昔桃源社から出版されたときの新書カバーの作品紹介文が編者解説にのっていた。この「紙の罠」という小説の魅力を語るにはピッタリ。オフビートコメディというと、個人的には80年代のジョナサン・デミ監督の「サムシングワイルド」などの映画が思い出される。時代を遡ると30年代、40年代頃にハリウッドでスクリューボールコメディというものが流行した。主人公があちらこちらとひきまわされてストーリーがどう転ぶかわからないような、そんな小説や映画がオフビートコメディなら、「紙の罠」は半世紀以上前に書かれたオフビートな小説だ。「紙の罠」って何?と思っていたが、紙幣を刷る用紙が盗まれたことからはじまる騒動なんですね。短編の「NG作戦」は?これは読んでのお楽しみ。知ってみると冒頭の尾行の様子が笑える。わたしは、「悪意銀行」を先に読んだのですが、読む順番は関係なく楽しめた。地方都市を舞台にした「悪意銀行」の開放感にくらべると、「紙の罠」は都会的というか東京のごみごみした雰囲気を感じた。お色気シーンも多い。近藤、土方のシリーズが、この長編2作と中編2本、短編1本で終わってしまったのは残念である(そのすべてが、この2冊の文庫本で楽しめるのは嬉しいことだが!!)。作者のあとがきによると、本格謎解き小説よりもナンセンス小説の方が書くのがたいへんで、ギャグを考えるのに疲れたとのこと。そんな凝ったナンセンスやギャグの数々をじっくりと楽しみたい。」


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