情報分析官が見た陸軍中野学校 上田篤盛 (著) 並木書房 (2021/5/7)

中野学校は教育機関であってスパイ組織ではない。

創設から廃校までわずか七年の歴史であったが、卒業生は二千人以上に及び、世界の至る所で秘密戦や遊撃戦に従事した。

その教育方針は諜報・謀略技術の修得よりも、情報勤務者としての判断力や行動力の養成にあった。

尋常でない秘密工作に携わる彼らには、孤独を生き抜く強靭な思想と柔軟な精神が求められた。

アジア諸国の「民族解放」教育も行なわれ、中野学校で培った「無私の精神」で現地軍に身を投じる者もいた。

防衛省情報分析官、陸自調査学校教官を長く務めた著者が、中野学校教育を分析・評価し、秘密戦の本質に迫る。

「情報戦は作戦の成否を握るキーファクターであるが、大局的な見地からの判断力は一朝一夕には習得できない。陸軍中野学校での教育は、情報の分析にあたる多くの先達が悩み尽くしてたどり着いた軌跡そのものであり、現在においても大いに参考とすべきものである。本書は埋もれてしまった中野学校をもう一度見直すきっかけを与えてくれた。」

「これまでの中野学校関連の報道及び著書には誤った内容が非常に多い。例えば占領期に起きた下山事件、帝銀事件、三鷹事件、松川事件などは、すべて中野学校卒業生の仕業と決めつける。また陸上自衛隊の調査学校(現在の情報学校)は中野学校にそっくりであると誤解する。また最近、マーレシアで起きた北朝鮮当局よる女性による神経ガス暗殺行為は中野学校直伝の手法とデマを説く自称、情報プロも存在する。然るに防大卒業以来、調査学校教官、情報科部隊勤務等、一貫して情報の道を歩いて来た著者は多数の史料の分析により正しい史実を伝える。」

「過去の著作物や映像作品等によりやや偏ったイメージとなっている陸軍中野学校について、元自衛隊情報分析官の的確な視点から改めて調査・分析・評価された秀作。作中で紹介/解説される近代戦史上のイベントも豊富かつ詳細で、読み応えがある内容となっている。」


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