この身体こそ、文明の最後の利器。
29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった――。
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。
「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。
【文芸】 #桐野夏生 『 #燕は戻ってこない 』主人公リキとほぼ同じ境遇現在進行形の自分は、リキの代理母契約も最後の選択も莫迦だと思う。そう思えるのは書店員の仕事が好きで人生に絶望していないからだ。貧しくともりりこのように自由に生きたい。(mmyk) #集英社 pic.twitter.com/KAq1FflHjE
— ジュンク堂書店旭川店 (@junkudo_asahi) March 15, 2022
【著者略歴】
桐野夏生(きりの・なつお)
1951年金沢市生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、『ナニカアル』で10年、11年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。2015年には紫綬褒章を受章、21年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。『バラカ』『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。
「桐野さんの筆力には毎度ほっぺたをブン殴られる痛みを伴いつつ圧倒されます。今作は、子どもを授からない夫婦への社会的貢献という名の看板のもと繰り広げられる産ませたい人、産めない人、産むことをビジネスと考えようとする人…それぞれの目論みが混ざり合い、子どもを授かるという行為を巡る物語。
代理母は結局のところ貧困女性からの搾取ではないか?と問題視したテーマで、非常に重く考えさせられた。おもしろいという言葉は陳腐になってしまうけれど、とにかくページを捲る手が止まらずあっという間に読み切ってしまった。桐野さんの魔力に捕まれ、自分の代理母になった気分を疑似体験した感じ。絶対読んで損はない。」
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