レインボーマン50周年…70年代は異色ヒーローものが全盛期だった

『愛の戦士レインボーマン』50周年!『ズバット』に『ライオン丸』日本が舞台ではない?70年代の“異色”だった特撮ヒーロー3選

2022年は特撮テレビドラマ『愛の戦士レインボーマン』放映から50周年を迎えたメモリアルイヤーです。

原作者の川内康範氏は1958年に放映された『月光仮面』なども手がけ、さらに森進一の『おふくろさん』など数多くのヒット曲を生み出した作詞家でもありました。

川内氏が原作を手がけた特撮はいくつかあるが、1973年の『(光の戦士)ダイヤモンド・アイ』や1975年に放映された『正義のシンボル コンドールマン』、

これに『愛の戦士レインボーマン』を加えて「川内ヒーロー3部作」とも称されている。これらの作品は当時の日本が抱えていた社会問題に鋭く切り込むと同時に、どこか異国の雰囲気を漂わせる作風だったように思います。

ここでは、「舞台が日本とは思えない異色の1970年代・特撮ヒーロー」をふり返ってみます。

インドの山奥で身につけた能力『愛の戦士レインボーマン』

『愛の戦士レインボーマン』は1972年からテレビ放映され、同時進行で複数人の作家が漫画を担当したのですが、その中には『タッチ』などでも知られる漫画家・あだち充氏の名前もありました。

本作はインドの山奥に住むダイバ・ダッタのもとで修行をしたヤマトタケシが七色の化身「レインボーマン」の能力を得て、ミスターK率いる「死ね死ね団」と戦う物語。

インドで修行したり敵の拠点がマカオやアフリカにあるなどリアルな海外設定に、他の子ども向け番組とは一線を画す雰囲気を感じさせます。

加えて敵が異形の「怪人」ではなく「普通の怖い人」であるのが、ことさら怖かったのです。

そんな彼らが日本を滅ぼそうとさまざまな破壊工作や経済混乱を企てる。邪魔なレインボーマンを倒すための容赦ない手段は今さらながらに恐ろしい。

主題歌の『行けレインボーマン』は快活なメロディと歌詞で、当時多くの子どもが「インドの山奥でんでん虫々~」のような替え歌を口ずさんでいたかと思います。

孤独なヒーローを讃えた主題歌から一転、2曲目のエンディグ『あいつの名前はレインボーマン』ではレインボーマンを倒すと意気込む敵側視点となり、挿入歌の「死ね死ね団のテーマ」になると歌詞のほとんどが今なら間違いなく放送禁止レベルの内容です。

これらの作詞はもちろん、作詞家としても有名な川内康範氏が担当しています。

主題歌を歌った安永憲自は後に声優・水島裕として1982年に放映されたアニメ版の主題歌やタケシ役を担当。

敵が宇宙人だったり巨大ロボで戦ったりと、本作と違いタケシに仲間がいるなど明るめな内容でした。

マカロニウエスタン調だった『快傑ズバット』

1977年に放映された『快傑ズバット』は、原作を石ノ森章太郎氏が担当した東映特撮ドラマです。

私立探偵・早川健が親友の科学者・飛鳥五郎の仇を求め、「ズバットスーツ」をまとい悪の組織「ダッカー」と戦うのです。

主人公の早川を『仮面ライダーV3』などの宮内洋が担当。

白いギターを背中に担ぎ、白のスカーフやテンガロンハットを被ったカウボーイ姿の早川を宮内洋がキザにかっこよく演じていました。

本作で一番の魅力といえば、早川が各地で繰り広げる「日本一対決」でしょう。

早川は「ダッカー」のボスなどが雇う用心棒の特技で戦うのですが、早撃ちやナイフ投げのようなものから、尺八を使ったボウガンやトランペットから出る吹き矢を使うものまでかなり特殊な対決もありました。

ところが早川は「その腕前は日本じゃ~二番目だ」と相手を挑発したうえで、どんなに荒唐無稽な特技も打ち破ってしまうのだから恐れ入ります。

さらに変身ヒーロー(?)でありながら、早川はギター内部に収納した「ズバットスーツ」に着替えて「ズバット」になったのです。

ズバットスーツも飛鳥の開発途中だったものを、早川が溶接して完成させたりとかなりの異色っぷりです。

そんな本作ですが実は「渡り鳥シリーズ」といった日活無国籍映画のテイストを流し込んでいるのが特徴。

日本が舞台でありながらマカロニウエスタン調の設定や雰囲気を漂わせていました。

また「ズバット参上! ズバット解決!」「飛鳥五郎という男を殺したのは貴様だな!」など、ファンには堪らない数々の名セリフが生まれた作品でもありました。

西部劇的作りに夢中になった『快傑ライオン丸』

最後に紹介するのが1972年に放映されていた『快傑ライオン丸』。

戦国時代を舞台に、ヒマラヤ山中で邪悪な妖術を身につけ日本征服を企む「大魔王ゴースン」に対し、その野望を打ち砕かんと果心居士(かしんこじ)に育てられた獅子丸が「ライオン丸」に変身し仲間とともに戦います。

獅子丸が師匠から受け継いだ「金砂地の太刀」の鎖が外れ、「風よ!光よ!」「忍法獅子変化!」と唱えることで白い獅子顔の剣士「ライオン丸」に変身。

一方、ライバルである邪剣士・虎錠之介も、ゴースンから授けられた「銀砂地の太刀」で全身トラ模様の「タイガージョー」へと変身します。

獅子と虎の対決は宿命なのかもしれません。

こうしたメインキャラ以外にも、ゴースン配下の忍者怪人も「戦国時代」の殻を破り、さらには時空を超えたネーミングぞろいでした。

例えば「ムササビアン」は序の口で、高圧電流を放つ槍を武器にした「エレサンダー」や吸血怪人「ゾンビー」、さらにパンダをモチーフ(?)にしたであろう「パンダラン」などが登場していたのです。

それもそのはず、本作は『マグマ大使』などの「ピー・プロダクション」が制作しているのですが、東映が手がけた『仮面の忍者 赤影』や『変身忍者 嵐』のような「特撮時代劇」と呼ばれる作品なのです。

多くのファンを獲得した『快傑ライオン丸』の人気を受け、翌年には『風雲ライオン丸』が制作・放映。

こちらも舞台を「戦国時代」にしてはいるのですが「西部劇」を意識した作品となっており、さらに「弾丸(ロケット)変身」でライオン丸に変身しています。

今回紹介した3作は当時少年だった、現在は50代後半の人に今なお心に刻まれたままの思い出深い特撮番組でしょう。

多国籍かつ異国感ある設定であるものの、名乗りを上げたりお決まりの口上のなかに日本特有の「様式美」を感じずにはいられない名作ぞろいでした。

おすすめの記事