歳をとると睡眠時間が短くなるのには理由があった
『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、シリーズ「脳の不思議」を10年以上にわたって放送。
自然科学研究機構生理学研究所教授の柿木隆介先生が、脳のしくみについてわかりやすく解説しています。
目次
「寝る子は育つ」って本当?
寝ている時でも脳が働くということですが、実は起きている時とは違う効果があるそうで、それは、昔からいわれている「寝る子は育つ」という言葉とも関係しているようです。
柿木先生「寝ている時に成長しているわけではないですが、成長ホルモンというのがたくさん出るんですよ。起きている時はあまり出ないんですけどね」
人は寝ている間にレム睡眠とノンレム睡眠が4、5回繰り返されますが、ぐっすり寝ている状態のノンレム睡眠の3回目(ステージ3)にようやく成長ホルモンが出るそうです。
そのため、3回目に届くまでに起こされてしまうとリセットされるので、成長ホルモンがあまり出ないことになります。
現在、柿木先生が特に心配しているのはウクライナのこどもたちで、あまり眠れない状態が続くと、成長に悪影響を及ぼすのです。
必要な睡眠時間は10歳までは8~9時間、15歳で約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、加齢と共に必要な睡眠時間が少なくなるということが報告されている。加齢によって昔ほど長時間眠れなくなったという悩みを聞くが、実は加齢に伴い必要とする睡眠時間が少なくなっているだけだ。
— 青い薔薇 (@Trans_Blue0630) June 1, 2022
大人になると睡眠時間が減る理由
成長ホルモンはこどもだけに出るものではなく、実は大人になっても出るものです。
柿木先生「こどもの時はとにかく骨をつくるとか筋肉を増やすとか、ケガをした時に修復する作用があるんで、たくさん必要なんですね。
大人になるとだいぶ減るんだけども、減ってもケガの治療とか身体を休めるのに必要なんですよ。
だから大人にとってもせめて1回はステージ3とか4とか、深い眠りになる必要があるんですよ。
ただ、こどもほど顕著じゃないし、歳をとるとほとんど成長ホルモンは出なくなるんで」
では、大人になるほど睡眠時間が減るのと、成長ホルモンが出なくなることは関連性があるのでしょうか。
柿木先生「直接的には関係はないけど、結果的にはそうなります。
深い眠りによる成長ホルモンも必要ないし、深い眠りになかなか行かないことが多いですね」
6時間寝たいのに5時間で目が覚めてしまう…。加齢ゆえか…?今日はお昼のバイトが2つハシゴするので、もう少し睡眠時間ほしかったが仕方ない。がんばれ、わたし!
— BAR 梅ノ香(ウメノコウ) (@bar_umenokoh) June 7, 2022
歳をとると睡眠は浅くなる
歳をとると睡眠時間が少なくなる理由として、柿木先生が真っ先に挙げたのは、代謝量がほとんどなくて疲れることが少ないため、休ませる必要がないということ。
その他の理由としては体内時計、1日のリズムであるサーカディアンリズムが、歳をとるとだんだん早くなっていく上に、眠る時に必要なホルモンであるメラトニンが年齢とともに減ることも関係しているそうです。
そのため、歳をとると深い眠りにまで至らず、浅い眠りが続く状態ので、途中で目が覚めやすくなります。
よく年配の方が「夜中に何度も目が覚めて、そのあと眠れない」という話をされますが、眠れない時は何をしていたのか聞くと「覚えていない」ということがあります。
柿木先生によれば、実は何度も起きた後、浅く眠っているということはよくあるそうです。
そして、「自分は夜中寝られないから、よく昼間にうとうとしてしまう」というのは、寝不足が原因による昼寝というよりは、浅い眠りを何度もしているということですので、本当にまったく寝られない極端な場合でなければ、そこまで問題はないようです。
体力上限 :100
満タン回復に必要時間:10時間
限界睡眠時間 :7時間→加齢で減少
1時間当たり :10回復
※余った体力の翌日引継ぎ不可最近こうなんじゃないかって思い出してきた
— ヤス (@yasu_3rd_) June 4, 2022
睡眠をしないとどうなる?
では、人間は本当に睡眠をしない状態が続いても問題はないのでしょうか。
実際に寝ない場合にどうなるかは、拷問という意味合いで軍事的に実験が行われたケースがありますが、これが公表されることはありません。
しかし、科学者が実験したケースもあり、1960年頃に行われたスタンフォード大学の実験では、若い男性が実際に起き続ける実験を行ったそうです(今では大問題となるでしょうが)。
その男性は2日目で目の焦点が定まらなくなり、4日目ぐらいで幻覚が出るようになり、7日目でろれつが回らなくなる状態に。
10日目は何を言っているのかわからない状態になり、11日で実験は中止。
実験が終わってもすぐに寝ることはなく、興奮状態にあったそうです。
起き続けるとメラトニンは出ずに、コルチゾールやドーパミンといった興奮ホルモンばかり出る状態。
寝ようにも寝られない状態だったようですが、なんとか寝かせて14時間ほど寝続けていたそうです。
そして、元に戻るまで数か月はかかったそうです。
後遺症などはなかったといわれているものの、一般の人でも徹夜後は免疫力が落ちて病気になる可能性があるなど、やはり人間にとって睡眠は大事なようです。