こんな中途社員は嫌だ…採用してかなり後悔したこと

採用してかなり後悔した「中途社員」の5大特徴

コロナ禍でも、企業の「中途採用」が活発です。

かつて日本企業では、新卒で採用した社員(以下、プロパー社員)を長期にわたって雇用し、欠員が生じた場合に例外的・補完的に中途採用をする程度でした。

ところが、近年は事業・組織を改革するための主戦力・即戦力として中途採用をするようになっています。

採用人数も増え、年齢層も若年層から中高年層へと広がっています。

ただ、すべての中途採用社員が大活躍しているかというと、どうでしょうか。

中途採用社員は主戦力・即戦力としての期待が大きいだけに、「期待したほどではなかった」と後悔するケースもあるようです。

今回、大手・中堅企業の人事部門の責任者・担当者21人に、アンケートとヒアリングで中途採用社員について調査。

調査結果をもとに、採用して失敗だった中途採用社員の特徴について考えてみましょう

人事の責任者・担当者の7割が失敗を経験

まず、「中途採用で失敗した(採らなきゃ良かった)という経験がありますか」と尋ねました。

結果は以下の通りでした。

よくある:5名
たまにある:9名
ない:7名

「ない」という回答は少数派でした。

ちなみに、昨年10月に新卒で採用した社員について「採用して後悔した経験」があるかどうかを調査したところ、人事責任者・担当者の「ない」という回答はゼロでした。

新卒採用に比べて中途採用のほうが、人事部門が後悔する確率は低いようです。

「ない」という回答では、次のようなコメントがありました。

「今のところ、すごく後悔したというケースはありません。新卒と違って採用数が少ない分、採用面接などを丁寧にやっています。こちらが期待するスキル要件なども明らかで、新卒採用の場合と違って、『採用してみたら面接時とはまったく別人だった』と驚くことはありません。入社後は、たいてい期待通り活躍しています」(機械)

つづいて、「よくある」「たまにある」と回答した14名に、「採用して失敗した」と感じた中途採用社員の特徴を訊ねました。以下の5つの特徴がありました。

一部業界では「経歴詐称」スレスレのケースも

(1)出羽の守

中途採用社員には、プロパー社員にはないスキル・経験・マインドを持ち込んでくれることが期待されます。

ただ、前職のことを持ち出すだけで、会社でそれをどう生かすといった姿勢がなく、プロパー社員に受け入れられないということがあります。

「前の会社ではこうでした、これが常識でした、と前職のことばかりが前面に出てしまって、自分自身が変わろうというマインドが弱い人がいます。いわゆる出羽の守ですね。そういう人は、会社の中で伸びませんし、職場ではプロパー社員から疎まれてしまい、あまり活躍できません」(素材)

(2)順応しすぎる

逆に、中途採用社員が短期間で会社に溶け込み、順応してしまうというケースがあります。

そのため、プロパー社員中心の組織に新風を吹き込んでほしいという会社の期待を裏切ってしまいます。

「中途採用なのに、『新卒でうちに入ったの?』と思ってしまうくらいに組織に同化し、空気を読んでわが社のやり方に同調する中途採用社員がいます。仕事ぶりなど決して悪いわけではありませんが、改革の先導者になることを期待して採用したので、かなりガッカリします」(電機)

(3)経歴詐称

中途採用では、応募者の前職での経歴を重視して採用します。

ところが、ITやコンサルティングなど一部の業界では、経歴詐称あるいは経歴詐称スレスレというケースが多く、問題になっています。

「IT業界では、経歴詐称は日常茶飯事です。10人規模のプロジェクトでリーダーの補佐をしただけなのに『30人規模のプロジェクトのリーダーだった』とか、要件定義をした経験がほとんどないのに『重要プロジェクトで要件定義をした』とか。転職希望者に経歴を盛るようにアドバイスしている悪質な転職エージェントもあるようで、頭の痛い問題です」(IT)

人事は「様々な事情」と向き合わなければいけない

(4)転職癖がついている

転職で入社してきたということは、再び転職(退職)してしまうことがあります。

これは致し方ないことですが、短期間で、些細な理由で辞められると、人事部門にとっては痛手です。

「金融業界では、転職を繰り返す人がたくさんいます。それぞれの転職には理由があるでしょうが、明らかに転職癖がついていて、短期間であっさり転職してしまうという人もいます。当社では中途採用の数が多く、転職エージェントに相当な手数料を払っており、無視できない問題です」(金融)

(5)採用時に予測できない変化で退職

採用時には予測できなかった変化によって、中途採用社員が退職してしまったり、期待通りの活躍をしてもらえないということがあります。

「入社後に体調を崩してしまった」(小売り)
「親の介護のために退職してしまった」(エネルギー)
「結婚を前提に付き合っていた彼女と破局し、転職してしまった」(精密)

採用する側の反省の弁も

中途採用で不本意な結果を招いていることについて、人事部門から反省の弁がたくさん聞かれました。

1つは、「採用の進め方」の問題です。

新卒採用では、ある時期にたくさんの学生を選考しなければいけません。

学生の場合、潜在能力は不確かです。

それに対し中途採用では、採用数が少ないのでじっくり選考できますし、応募者のスキルや経験などもかなり明らかです。

一般に、新卒採用よりも中途採用のほうが、人事部門にとって難易度が低いはずです。

「中途採用で失敗するというのは、採用担当者が転職エージェントに頼りきりで面接など手抜きしているか、面接スキルが不足しているか、どちらかでしょうね。いずれにせよ我々人事部門として大いに反省するべき点です」(住宅)

また、中途採用をどの部門が主体的に進めるべきか、という課題があります。

「当社では、中途採用についても人事部門が中心になって実施していますが、技術が高度化し、応募者の経歴・スキルなどを正確に評価するのが難しくなっています。中途採用については、各部門が主体的にやり、人事部門は側面でサポートするような形に、採用プロセスを見直す必要がありそうです」(精密)

受け入れるプロパー社員にも問題がある

もう1つの問題は、中途採用社員を受け入れるプロパー社員の側の姿勢です。

経営トップは、事業・組織を変革する先導者として中途採用社員に期待し、人事部門はその期待に応えるために優秀な社員を採用します。

ところが、こうした意図や取り組みが配属先のプロパー社員に伝わらず、中途採用社員が十分に活躍できないという事態が発生しています。

「当社では、プロパー社員が中途採用社員をよそ者扱いしがちです。中途採用社員が良い提案をしても、プロパー社員が『わが社にはわが社のやり方がある』とか、『まずわが社のやり方をちゃんと勉強してからモノを言え』と、頭ごなしに否定するケースが多々あります」(商社)

「以前、現場の古参のプロパー社員が中途採用社員に『そんなに前の会社が良いなら、さっさとうちを辞めて出戻りしたら?』と言い放って、本当に退職し出戻りしてしまいました。この話を披露すると笑われますが、私はちょっと笑えません」(食品)

事業・組織を改革するためには、プロパー社員も中途採用社員もマインドを変え、お互いが知恵を出し合う必要があります。

しかし、そういう良好な関係を構築し、実際に改革の成果を実現しているという企業は少ないようです。

日本企業にすっかり定着したと言われる中途採用。

しかし、採用プロセスや受け入れるプロパー社員の姿勢など、反省し、改善するべき点がまだまだありそうです。

おすすめの記事