冬に子供が生まれる 佐藤正午 (著) 小学館 (2024/1/30) 1,980円

著者七年ぶりの新作長編!直木賞受賞第一作

その年の七月、丸田君はスマホに奇妙なメッセージを受け取った。

現実に起こりうるはずのない言い掛かりのような予言で、彼にはまったく身におぼえがなかった。

送信者名は不明、090から始まる電話番号だけが表示されている。

彼が目にしたのはこんな一文だった。

今年の冬、彼女はおまえの子供を産む

これは未来の予言。

起こりうるはずのない未来の予言。

だがこれは、まったく身におぼえのない予言とは言い切れないかもしれない。

これまで三十八年の人生の、どの時代かの場面に、「彼女」と呼ぶにふさわしい人物がいるのかもしれない。

そもそも、だれが何の目的でこの予言めいたメッセージを送ってきたのか。

丸田君は、過去の記憶の断片がむこうから迫ってくるのを感じていた──。

三十年前にかわした密かな約束、
二十年前に山道で起きた事故、
不可解な最期を遂げた旧友……

平凡な人生なんていったいどこにあるんだろう。

『月の満ち欠け』から七年、かつてない感情に心が打ち震える新たな代表作が誕生。読む者の人生までもさらけ出される、究極の直木賞受賞第一作!

「佐藤正午さんの作品には共通したテイストがあると思っていますが、この作品はちょい変化球ですね。結局何もわからないで終了なのかな。もやもやします。でも、もやもやするのがある意味とても気持ち良いです。」

「最初は誰の話?そもそも語ってるのは誰?(津田さんか?)ってなるけど、全容が見えてくると、あとはイッキ読みの面白さ。
UFOが話の核だけど、意外と些細なことなのかな?
人の記憶、時間とは何か‥みたいなのを問うているのかも。」

「UFOや超常現象とは、誇大妄想や、バランスを欠いた脳内物質から生み出されたものなのかもしれない。
ただ、「平凡な」周りの人々も、勝手な思い込みや言葉足らずですれ違い、真実には辿りつけない。
湊先生は、そうした虚しい人間の行動すべてが愚かで悲しく思えて、ひとりで泣いているのではないか。
よく読むと各人物像がとても丁寧に描かれており、なぜそれぞれが認知の偏りや精神的な問題を抱えてしまったのかがわかって面白かった。」


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