北関東「移民」アンダーグラウンド 安田峰俊 (著) 文藝春秋 (2023/2/6) 1,760円

ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪

北関東というのは独特の匂いのする地域である。

大宅賞作家・安田峰俊の最新作は、その北関東に地下茎のごとく張り巡らされた、「移民」たちのネットワークのルポだ。

移民に「」がつくのは、日本には制度上、移民はいないから。

しかし、悪名高い、技能実習生制度のもと、ベトナム人だけでも実習生は20万人近く。

その一部は低賃金や劣悪な環境に嫌気がさして逃亡、不法滞在者の「移民」として日本のアンダーグラウンドを形成している。

彼らは自国の経済が発展し、出稼ぎに出なくても食えるようになると、日本になど来なくなる。

そのため、アンダーグラウンドの主役はどんどん変わる。かつて中国人が主役だったアンダーグラウンドを、今、占拠しているのは、無軌道なベトナム人の若者たちなのだ。

ベトナム人によるアンダーグラウンド社会が日本人に知られたのは、群馬県で起きた「豚窃盗事件」。

養豚場から盗まれた豚は、彼らのアパートで解体され、彼らのネットワークの中だけで処理されたため、警察の捜査は難航した。

このように、アンダーグラウンドで完結する犯罪は表に出にくいのである。

桃などの果物も、かなり派手に盗まれているが、犯人はなかなか逮捕されない。

本作では、筆者と通訳の「チーくん」(彼は日本育ちのベトナム難民の2世だ)が、まるでホームズとワトソンのように、「移民」による事件現場を訪ね歩く。

血なまぐさい殺人現場、タトゥーだらけのしたたかな不法滞在者たち、常にただよう薬物とバクチと女のニオイ。

あちこち探り歩いて、ついに北関東ベトナム人アンダーグラウンドのボス、「群馬の兄貴」にたどり着く。

スキンヘッドに気合の入った刺青、見るからに恐ろしい「群馬の兄貴」が犯した真の罪とは……。

豚の窃盗から、誘拐、殺人と、あらゆる犯罪現場に、ベトナム人の好物である雷魚とアヒル、そしてビールを手土産に走り回る2人。

恐ろしくて面白い、アンダーグラウンドレポート!


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事