「ダブル連結トラック」なぜいま大幅拡充? 外環道や近畿道もOK 「急に要望増えた」ワケ
1台のトラクターで大型トラックのトレーラー2台をつないだ「ダブル連結トラック」が、まもなく一般的なものになりそうです。
国土交通省が走行可能路線の拡充を予定しており、同省道路経済調査室によると、2022年11月にも通達改正がなされる見込みだといいます。
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まもなく当たり前の光景になる? 「ダブル連結トラック」
通常の大型トラックは全長約12mで、これを超える車両を走行させるには、ルートを国に申請し、特殊車両通行許可を取得する必要があります。
「ダブル連結トラック」の取り組みは、この特車許可の基準を全長21mから最大25mに緩和するもの。
2016年度から実証実験が行われ、2018年度に本格導入となりました。
1台で大型トラック2台分の輸送力を確保できることから、トラックの人手不足に対応する施策として期待されています。
高速道路の走行ルートは当初、新東名の海老名JCT~豊田JCTに限定されていましたが、2019年には岩手県(東北道 北上江釣子IC)から福岡県(九州道 大宰府IC)までの幹線ルートに拡大しました。
それが今回、ついに青森県から鹿児島県・宮崎県まで拡大します。
磐越道・常磐道の一部、中央道といった既存対象路線のバイパス路線や、千葉、新潟、北陸、長崎や大分などにも拡大、また本四高速も対象となり、範囲は四国にも広がります。
「対象路線の拡充はあくまで高速道路本線の話で、どのICで下りるか、一般道をどう行くかは、物流事業者と各道路管理者が申請ごとに確認していくことになります。ただ、この拡充で国としての姿勢は示せます。物流事業者が、自治体など道路管理者と話をしやすくなるでしょう」(国土交通省 道路経済調査室)
ダブル連結トラック、めっちゃ増えとる??他社との重連も?? pic.twitter.com/XlcM2rhicA
— Satoshi / Cong (@Satoshi02ME) October 28, 2022
やっぱり運転は難しい!
東京近郊では外環道の一部、大阪では近畿道なども対象となり、大都市のすぐ近くでダブル連結トラックを見かける機会が増えそうです。
とはいえ、物流事業者から要望もあった首都高などの都市高速や、外環道の内側などは対象外。どのような基準で選定されたのでしょうか。
「まず、暫定2車線区間は対象外としました。ダブル連結トラックは、かなり大きいのでスピードも出ず、追い越しが難しいためです。もうひとつはカーブなど線形の問題で、都市高速や一部ICのきついカーブは曲がりきれません。首都高湾岸線など、途中までは行けても、ICの構造的に降りられない、降りた先で進めないといったところも外しました」
道路経済調査室はこう話します。ダブル連結トラックはやはり、走行に大きなハードルがあるようです。
しかしながら、これまで事故はゼロなのだとか。
「牽引免許を持つドライバーに限られるなど、“うまい人”しか運転できないというのもあるでしょう」ということです。
ではなぜ、3年間変化がなかった対象路線を、いま拡大するのでしょうか。
実は、「ここ1年で急速に要望が増えている」という背景があるそうです。
(俺)「ダブル連結トラック、これまで事故ゼロらしいですよ。」
(あ)「牽引免許が必要で『うまい人』しか運転出来ないからとか、お前も牽引免許持ってる辺りからして信用出来る訳無いだろ!」 pic.twitter.com/mUJgi08Vjr— 辻村 伸太郎 (@s_tujimura) October 28, 2022
なぜいま拡充? 攻めの手段としてのダブル連結トラック
ダブル連結トラックの運行台数は、2021年6月からの1年間で、67台から一気に205台まで増加したそうです。
道路経済調査室は、「人手不足の深刻化があることは間違いない」といいます。
2024年からは、運送業の時間外労働の上限規制が始まり、ひとりのドライバーが連続して運行できる時間はますます減ります。
それに備えてダブル連結トラックを導入したところ「結構よかった、と思った事業者さんが多いのではないか」とのこと。
それだけでなく、「CO2(二酸化炭素)削減効果も大きい」といいます。
ダブル連結トラックは通常の大型トラックに比べ、排出CO2を約4割減らせるそうです。
CO2排出量をいかに減らせるかという点も、いま、物流企業にとって重要なポイントになっています。
たとえば物流大手の西濃運輸は今年5月から、ウェブサイト上で国内輸送の運賃を見積もる際に、CO2排出量を算出する機能を追加し、排出量の可視化を図りました。
環境に優しい輸送を実現することは、物流企業にとって、荷主に自社を選んでもらうための武器になっています。
これと担い手不足の双方を解消する“攻めの手段”としてのダブル連結トラックは、これからも増えるのではないでしょうか。
ちなみに、ダブル連結トラックが今回の拡充区間を実際に走るのは、申請区間の長さにもよるものの、来年3月くらいからではないか、ということでした。
貴重です!『連結トラック』の内輪差が分かる珍しい動画!左前方タイヤ及び一番後ろのタイヤとポールとの距離・・・これが内輪差です。こうやって改めて見ると新たな発見があるかも。是非リプで教えてくださいね? pic.twitter.com/gTp6pBq3wD
— 西濃運輸株式会社 (@seinocorporatio) October 25, 2022
ネットの声
「大型車両の運転は本当に難しいし、こういう難しい大型を運転するドライバーさんの運転技術は素晴らしいです。
その結果が現在まで無事故なのだと思いますが、拡大していけば経験不足のドライバーが運転する可能性も出てくるし、需要が高まればドライバーが十分に休息できないかもしれない。
そういった問題はしっかり解決してほしい。
物流は国の血液です。しっかりと技能のある人をドライバーにして、その人たちの賃金をぐっと上げてほしい。
ドライバー業界にもそういう花形で稼げるポジションがあれば、担い手も増えると思う。」「これまでに事故がなく、ドライバーも技量がある人に限定されるということは、輸送量増強と安全の両立のためには良い材料だと思います。
ただ、車体の構造上、連結ではない大型トラック以上に、内輪差による巻き込みのリスクは大きくなります。ドライバーがいくら技量があって安全運転をしていても、歩行者や二輪車が、左折するダブル連結トラックの左前輪の位置で気を抜いてトラックに近づいたりすると、左後輪に巻き込まれるリスクは、普通の大型トラック以上。
ダブル連結トラックが増えることを踏まえた、より内輪差の恐ろしさを伝える交通安全の教育も必要になってくると思います。」「まず、バックが超難しそう。普通のトレーラーでさえ、バックの初動でトレーラーを向ける角度を決めるときに、「行きたい方向と反対にハンドルを切る」難しさがあるのに。2台引っ張ると、どんな複雑な動きになるのでしょうか。こういうクルマを運転出来る人がいるとは驚きです。
一方周囲のドライバーにとっては、自動車と列車が路上で混在するようなもので、これまた難物。追い越しの途中で「しまった、無理だぞ!」というケースがしばしば起きるのでは。まあ区間は限られていますが、運転環境がかなり変わります。
しかしダブル連結で驚いているわけには行かない。あまり遠くない将来に自動運転車が数台単位で、無人編隊走行するかも知れませんね。そう言うクルマは事実上、トラックヤードとSA、PA以外には駐まれないかも知れませんが、設備の整備も大変そうです。」