糖質中毒が痩せない原因…炭水化物が好きなレベルならいいけど

「痩せない原因は糖質中毒」医師が解説 炭水化物が“好き”レベルならOKな理由

メカニズムを知れば痩せるのは簡単

「摂取カロリーを制限しているのに、どうしても痩せられない」

「自分が痩せられないのは意志が弱いせいだ」

ダイエットがうまくいかずに、そんなふうに嘆いたり、自分を責めたりしている人が多いのではないでしょうか。

“肥満の医学”からすれば、それらはいずれも間違った認識です。

人が太るのはカロリーのせいではないし、痩せられないのは意志のせいではありません。

ずばり申し上げれば、痩せられないのは「糖質中毒」だからです。

糖質とは砂糖菓子などの甘いものばかりではありません。米やパン、麺類などの炭水化物も糖質です。

食べれば太ることが分かっていても、糖質依存症となってしまえば、脳が糖質を“もっとくれ”状態になるのです。

その中毒を治さない限り、本質的な肥満解消など到底、ムリなのです。

糖質中毒は肥満者ばかりではありません。

痩せた若い女性の中にも重症患者はたくさんいます。

彼女たちは菓子パンとジュースを食事がわりにしていますが、それもダラしないからではなく、脳がそうした食行動を求めているからなのです。

私は40年間にわたって糖尿病専門医として、延べ20万人以上の患者さんを診てきました。

糖尿病と糖質は切っても切れない関係にあるので、私はいつの間にか誰よりも糖質に詳しい医師になっていました。

そんな私が明言したいのは、糖質はあなたが考えているよりも遥かに恐ろしい物質だということです。

糖尿病に縁のない人でも、痩せている人でも、簡単に糖質中毒になります。

それによって太ることはもちろん、知らぬ間に健康を著しく害します。

もう一つ、明言したいのは、人が太るメカニズムを知りさえすれば、痩せるのは実に簡単だということです。

今年1月、私が糖質について考えてきたことの集大成として、『糖質中毒 痩せられない本当の理由』という本を出しました。

ここでは、そのエッセンスをお話ししましょう。

肥満はなぜ起きるのか

最初に押さえておきたいのは、肥満とは何なのかです。

簡単に言えば、体の中に脂肪が異常に蓄積された状態です。このときの脂肪を専門用語で「トリアシルグリセロール」と言います。

健康診断の血液検査の項目で「中性脂肪」と示されているものです。

体の中に脂肪が異常に蓄積された状態が肥満なのだから、「脂質をたくさん食べれば太る」と多くの人は考えます。

脂分のない蕎麦やおにぎりはいいけれど、脂身の多い肉は避けるべきだと思うわけです。

しかし、これは完全な間違いです。

日本人の主食である炭水化物が糖質であることはすでに説明しましたが、脂身たっぷりのステーキ200グラムよりも、おにぎり1個、食パン1枚、ざる蕎麦1枚のほうが、はるかに太ります。

人を太らせるのは脂質ではなく、糖質(炭水化物)なのです。

では、なぜ炭水化物が人を太らせるのでしょうか。

炭水化物を食べると、消化の過程で1個1個のブドウ糖に分解されます。

ブドウ糖は小腸から吸収されて血液中に送られます。

血液中に溢れたブドウ糖を、インスリンという膵臓から分泌されるホルモンが、まずはグリコーゲンに換えて、肝臓や筋肉に貯蔵します。

しかし、グリコーゲンとして貯蔵できる量は限られていて、余ったブドウ糖はトリアシルグリセロールに置き換えられ、脂肪細胞に蓄積されます。つまり、太るわけです。

しかも、糖質はほぼ100パーセント、ブドウ糖となり、無駄なく吸収されます。

だから、炭水化物をたくさん食べれば、体の脂肪がどんどん増えて太っていきます。

その一方で、脂質を食べても太ることはありません。

糖質中毒を一口で説明すると、「炭水化物(糖質)の摂取をやめられない状態」と定義することができます。

炭水化物が「好き」というレベルで済んでいれば、それで構いません。

日本人なら炊きたての白いご飯が好きなのは当たり前です。

私はラーメンも寿司も大好きなので、ときどき食べますが、「今日はやめておこう」と思ったら食べません。

これが「好き」で済んでいる人の食行動です。

ところが、「欲しい」となると話は別です。

欲しくてたまらなくなり、「やっぱり、やめておこう」が利きません。

糖質は摂れば摂るほど渇望につながるのです。つまり糖質を摂れば摂るほど脳が侵され、「もっともっと」となります。

タンパク質や脂質ではそうならないのに、糖質で中毒になるのは、遠い祖先のDNAのせいです。

糖質はエネルギー源であるために、私たちの脳には「糖質を摂れ」という指令を出すシステムがもともと備わっています。

しかし、それは狩猟や採集で命をつないできたときに必要とされたもの。

ギリギリしか糖質が摂れなかったからこそのもので、今は働かせないほうがいい仕組みです。

きっかけは気晴らしのおやつ

50代女性・Aさんの実例を紹介しましょう。

Aさんは編集プロダクションの経営者です。

仕事の時間は不規則でストレスも溜まるようです。

そんな彼女の気晴らしの一つが、仕事中に口にするおやつでした。

最初は老舗の和菓子やデパ地下のケーキなどを食べていました。

ところが、いつの間にかコンビニで買った袋菓子が手放せなくなっていたのです。

数年の間に体重もかなり増え、健康のことも見た目のことも非常に気にしていました。

きっかけは小さなことです。

気晴らしのおやつです。

和菓子やケーキをたまに食べるのならいいのですが、毎日の袋菓子で脳の「もっと、もっと」が始まります。

すると、「好きなお菓子が食べたい」を超えて、「糖質が摂りたい」という渇望に変化し、「もう袋菓子でもなんでもいい」となってしまうのです。

Aさんは自分の意志の弱さを責めるわけですが、それは間違い。

脳との戦いに負けているだけです。

ご飯や麺類などの炭水化物を「食べすぎだとわかっていてもやめられない」という人も同じことです。

次に糖質中毒が起きるメカニズムですが、カギとなるのは「血糖値」です。

炭水化物、お菓子、果物、砂糖入りの飲料水……などの糖質を摂取すると血糖値が上昇します。

野菜は基本的に血糖値を上げないけれども、ジャガイモやカボチャなど糖質が多いものを食べると上がります。

要するに、血糖値を上げるのは、あくまでも糖質です。

摂取した糖質量が多ければ、血糖値は急激に上がります。

すると、その血糖値を下げるために、膵臓から素早く大量のインスリンが分泌されます。

大量でないと間に合わないからです。

ところが、インスリンが大量であれば、今度は血糖値が急激に下がります。

下がっても80くらいならいいのですが、70を切るくらいになると「低血糖」という低すぎる状態になります。

血糖値は高すぎても低すぎても生命に危険を及ぼしますから、脳の指令でアドレナリンが出て、さまざまな不快症状でシグナルを発します。

イライラ、強い空腹感、冷や汗、動悸、震え、吐き気などです。このシグナルは、脳からの「早く糖質を摂れ」という指令です。

そこで糖質を摂ると、血糖値が上がるとともに、ドーパミンというホルモンが脳内で分泌される。

ドーパミンは「報酬系」と呼ばれ、脳の指令通りに糖質を摂ったご褒美として、不快な症状を和らげスカッと幸せな気分にしてくれます。

この脳が気持ちいいと感じている状態が「至福点」と呼ばれるものです。

至福点を覚えた脳は、「また気持ちよくなりたい」と繰り返し求めます。

いわば脳が支配されたようなものです。

つまり、糖質を摂る→血糖値が上がりドーパミンの働きで幸せな気分になる→血糖値に比例してインスリンが分泌される→血糖値が下がる→下がりすぎると脳からの指令でアドレナリンが出る→強い空腹感、イライラなどの不快症状→糖質が無性に欲しくなる→糖質を摂る→ドーパミンの働きで幸せな気分になる→でも、血糖値が上がっているからインスリンが分泌される……というサイクルが繰り返されることになります。

糖質中毒が引き起こすさまざまなリスク

糖質中毒とは、糖質に対する脳の反応メカニズムによって、こうしたサイクルから抜け出せなくなっている状態なのです。

最近、些細なことでキレる人が増えました。

あおり運転をする人や、怒鳴り散らしたり暴力を振るう人がたくさんいます。

私は、食生活が大いに関係しているのではないかと考えています。

現代社会は食品メーカーによってつくられた商品で溢れています。

少し昔のことを考えてみてください。

24時間いつでも食べ物が買える生活ではなかったはずです。

コンビニに行けば、おにぎり、蕎麦、菓子パン、スナック菓子、ジュース……と、糖質の塊だらけです。

こうした環境で糖質中毒にならずにいることは簡単なことではありません。

意識していなければ、たいてい陥ります。

ここにあるのは、食品メーカーが儲かれば儲かるほど、国民は不健康になっていくという構図でしょう。

あなたが、意味もなくイライラすることがあったら、その前後を振り返ってみてください。

・イライラする前に、糖質を摂っていませんでしたか?
・イライラしながらも、糖質を渇望していませんでしたか?

では、糖質の過剰摂取はどんな病気を引き起こすのか。

まず、万病の元である肥満ですね。

その肥満のすぐ先にあるのが糖尿病です。

糖尿病になると、血液中にブドウ糖が溢れた状態になりますから、血糖値を上げるだけではなく、全身の血管の壁にベタベタとくっついて傷をつくります。

つまり血液も血管も状態が悪くなります。

糖尿病は免疫系の機能を低下させるので、あらゆる病気にかかりやすくなります。

がん、心筋梗塞、脳卒中、アルツハイマー病、それらの発症率はすべて高くなります。

2年前から世界を席巻する新型コロナウイルス感染症ですが、その重症化にも糖尿病が大きくかかわっています。

2020年に学術雑誌「セル・メタボリズム」で発表されたのは、ヘモグロビンA1c値(過去1~2カ月の血糖の割合の平均値)が、7.3パーセント程度から8.1パーセント程度に上昇しただけで、感染者の死亡率は約10倍にはね上がるというのですから恐ろしい。

いずれにしても、血糖値を高いままにしておくと、命の危機が近づくと考えていいでしょう。

例えば、糖尿病が引き起こす合併症は非常に怖い。

おもな合併症には糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害の3つがあります。

腎症が重症化すれば血液透析が必要になり、網膜症がひどくなれば失明します。

神経障害があれば、末端の傷などに気づかず、壊疽を起こして足を切断するという悲惨なことも起こります。

血液透析をするようになると、人生のQOL(生活の質)が一気に低下します。

週に3回、1回5時間ほどを要するからです。

こうなる人がなんと毎年4万人もいるのです。

しかも、血液透析に入った人の5年後生存率は6割ほどですから、かなり寿命が縮まってしまいます。

ネットの声

「一応世にあるダイエット法は全て試した。
1番健康になったと感じたのはカロリー配分を糖質で60パーセント程度にする標準的な栄養配分方法+運動

糖質制限は過剰になると宗教になっていく。
ビーガンなんかも健康というより思想の問題である。
糖質制限を勧める人の理論には運動の要素が入っていないことが大半で、食事のみで健康を維持することに思考が集中している。
つまりある要素から逃げている信用できない理論なのである。
いくらそれっぽく理論を語っていても運動の要素が入らないダイエット法は屁理屈であって健康とは言えない。
運動のエネルギーは糖質
その反応を繰り返すのが生命活動、故に健康
それが答え。」

「お菓子などで食事を代替えしてしまう様な人は例外ですが、普通と言われる食事をして、後は運動習慣を身に付ける事が出来れば過度に糖質を悪として恐れる必要はないかと思います。
その運動習慣を身につけるのが大変だ、とおっしゃる方も居られるかと思いますが、食事の制限を行うのも大変な事だと思います。
運動習慣も食事制限も、どちらも修行・苦行にならない様に気をつけて行い継続するのが大切かと私は思います。」

「糖質制限を勘違いしてる人多いけど、糖質制限とはまったく糖質を摂らないことではない。
その人の生活や病気、目的に応じて摂取する糖質量を一定以下にする考え方。
また糖質を制限するだけでなく、動物性タンパク質を一定以上摂取することも必要で糖質制限して、野菜しか食べてないような人は結果が出ないどころか筋肉を削ぎ落すことにもつながる。」

糖質中毒 痩せられない本当の理由 牧田善二 (著) 文藝春秋 (2022/1/20) 858円

人はどうして太ってしまうのか。そして、なぜ痩せられないのか。

それはあなたのせいではありません。

知らず知らずのうちに、脳内が糖質に侵されて、「糖質中毒」になってしまったからです。

だから、意思で痩せようなどとは思わないことです。

それはムリです。

では、どうすればいいのか。

「中毒」になった脳を変えればいいのです。

本書は、糖質がどれだけ体に悪さを及ぼし、様々な病気の元となり、もちろん肥満を引き起こすそのメカニズムを詳述します。

そして、そこから脱却する効果てきめんの方法を伝授してくれます。(実は、リーサル・ウェポンがあるのです!)

その最終兵器を体験した体験談にもある通り、肥満からの脱却、そして糖尿病の改善は、まず間違いなく達成できます。

また、何を食べてよくて、絶対に食べたり飲んだりしてはいけないもの、さらにはどのような食べ方をすると効果があるかも細かくレクチャーしてくれます。

肥満と糖尿よ、さようなら。これであなたは救われるでしょう。

「あまたのダイエット本を読んできましたが、流石にたくさんの患者さんを自分で指導してこられた先生の書かれることは違うなあという感じです。新しい知見がいくつもありました。内容そのものはすぐに読めるものですが、何度も読み返して自分の中に落とし込みたいです。」

「読みやすく、あっという間に読むことができました。すぐにでも実践したい内容でした。」

「以前にも著者の本を読んだことがあり、目新しいことは少ないですが、改めて認識をしました。
ジュースなどはもう一生の飲まないとか、できることからやっていこうと思えました。」

 

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