1990年代は最速の戦い…300km/hの扉を叩いたカワサキ「ZZ-R1100」
1990年代は激動の時代でした。
1980年を前後して始まった熱病のようなバイクブームが一段落し、バブル契機が崩壊日本の経済と共にバイクブームも低迷期に入った時代でもありました。
そのような中、1996年に大型自動二輪免許が創設されました。
それまで、試験場で合格しなくては取得できなかった大型自動二輪免許が、教習所で取得することが可能になったのです。
これを機に、人気の中心は400ccクラスから大型バイクへと一気に向いていきました。
逆輸入車人気も高まって、そのブームを牽引したのがカワサキのZZR1100だったのです。
カワサキ「ZZR1100」の特徴
Kawasaki ZZ-R1100 1990年登場 総排気量:1052cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
精悍なスタイリングと高性能で人気爆発となったバイクです。
実は、1969年のCB750FOURをきっかけに、国内モデルの排気量上限は750ccとなっていました。
そのため、国産バイクでは“ナナハン”が大型バイクの象徴だったのです。
それを超える排気量のバイクは海外への輸出モデルであり、カワサキをはじめ日本の4大バイクメーカーはこぞって大型バイクを輸出していました。
また、そういったバイクは生産工場が海外にあったため、大型バイクの国内への逆輸入が始まったのです。
大型バイクは逆輸入でしか手に入らない時代でもあったのです(それは現在でも続いていますが…)。
当時、Z1をはじめ1100カタナやCB1100Rなど注目モデルが次々に上陸していましたが、当時はまだまだ高嶺の花だったのです。
そのような中、1990年代に為替レートが円高傾向となり潮目が変わりました。
大型自動二輪免許も取得しやすくなって逆輸入車人気が一気に爆発したのです。
そのブームを牽引したのがZX-10の後継として90年に登場したZZR1100でした。
147PSを発揮する1100cc水冷直4エンジン。
空力特性に優れたフルカウル。
安定感抜群の車体による300km/hに迫る圧倒的な超高速性能。
これらが注目されました。
1993年にはD型に進化。
その後、ライバルのハヤブサなども登場しましたが人気は根強く、2001年まで生産されるロングセラーバイクとなったのです。
月刊オートバイの読者による人気モデル投票企画「JAPAN BIKE OF THE YEAR」では、1990年、1991年にC型、1993年にD型が逆輸入車部門で1位を獲得しています。
カワサキ「ZZ-R1100」各部装備・ディテール解説
C型(1991年) ZX-10のボア径を2mm広げた1052ccエンジンを搭載。空力を意識したエアロフォルムも注目の的だった。ラムエア吸入口は1カ所。
ZX-10のボア径を2mm広げた1052ccエンジンを搭載。空力を意識したエアロフォルムも注目の的だった。ラムエア吸入口は1カ所。
D型(1993年) ラムエアの吸入口を2カ所にして強化、車体もリアタイヤのサイズが170から180になるなど、性能の底上げが図られた。
ラムエアの吸入口を2カ所にして強化、車体もリアタイヤのサイズが170から180になるなど、性能の底上げが図られた。
D型ではフロントブレーキのローター径が10mm拡大されたΦ320mmとなり、キャリパーも新型に変更されて制動力が向上している。
画像: 高速時の走行風を利用、インテークに取り込む空気へ加給効果をもたらし、パワーアップを図るラムエアをフロントマスクに装備。
高速時の走行風を利用、インテークに取り込む空気へ加給効果をもたらし、パワーアップを図るラムエアをフロントマスクに装備。
アナログ表示で320km/hまで刻まれているスピードメーターは超高速性能の証。一番左の燃料計はD型から採用。
大型バイクに何を求めるか…それはあらゆる場面での余裕の走りでしょう。
ZZR1100のパワーは147ps。
これは、現在のメガスポーツバイクの中にあっては物足りない数字です。
それでも、今の時代でもZZR1100は見劣りすることなく走ってくれることでしょう。
そう思わせるバイクです。
重量は250kg超なので、降りると重たいですが、一旦走り出すと見た目以上に軽快に走ってくれます。
街乗りでも十分ですが、真価を発揮するのは高速道路です。
とにかく、楽ちんなのです。
余裕の走りというのはこのことを言うのだろうと実感させてくれます。
どんなに速い車が来ても余裕でついていくことができます。
というよりも、本気で走れば道を開けてくれるでしょう。
自制心を持たなければ免許がいくらあっても足りなくなります。
それだと、大型バイクに乗っても…なんて思う人もいるかもしれませんが、先述したように「余裕の走り」こそが大型バイクの全てなんです。
現在においてもそうですが、1990年代のZZRは光り輝いてましたよ。