久々の250cc4気筒バイクNinjaZX-25R…カワサキがやってくれた!
実に13年ぶりに復活した250cc4気筒バイクが人気です。
数年前から噂されていたものの「まさか本当に出すとは」。
それだけ、250cc4気筒バイクというのはレアであり、それだけに待望されていたバイクなのです。
1980年代は熱病のようなバイクブーム
実は250ccバイクの4気筒エンジンというのはレアなんです。
その話をかつてのバイクブームに遡ってお話します。
かつて、空前のバイクブームという時代がありました。
1970年代後半からがその時代です。
その頃が青春まっただ中という人は現在50台くらいですね。
特に1980年代の半ばまでは、数多くのバイクが販売されました。
ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内4大バイクメーカーは、それぞれが最新の技術を投入して激しい開発競争を繰り広げていたのです。
当時は、大型バイクは限定解除が必要で、試験場の一発試験しか道がなく、かつ試験突破の難易度も高かったのです。
必然的に教習所に通って免許取得ができる中型(現在の普通二輪)免許に人気が集まりました。
それを、見越してバイクメーカーは400ccまでのバイクの開発に心血を注いだのです。
中でも、軽二輪と呼ばれる250ccクラスは、車検制度がないので維持費が安く、しかも高速道路に乗れるということで若者に特に人気でした。
そのような中で1980年代前半に、ヤマハのRZ250という高性能バイクが大人気となりました。
250ccでありながら35馬力というハイパワーな2サイクルエンジンを搭載していたのです。
それに対してホンダは1982年、VT250という4サイクルエンジンのバイクで同じ35馬力を達成。
これがまた大ヒットとなったのです。
2サイクルと4サイクル
2サイクルエンジンと比べると、4サイクルエンジンは同じ回転数で爆発回数が半分になります。
そうなると4サイクルエンジンは基本的に馬力の面では不利です。
馬力というのは回転の強さ×回転数で決まるので、どうしても回転数を高くして馬力を稼ぐ必要があります。
高回転まで回すためにはどうしたらいいか…。
気筒数を多くするのです。
つまり単気筒(シングル)より2気筒(ツイン)、2気筒より4気筒の方が有利となるのです。
※4気筒と4サイクルを混同する人がいるので注意…現在発売されているバイクはほとんど4サイクルです。
気筒数はバイクによって違いますよ。
気筒数が増えるとその分一気筒当たりの容積が小さくなり、エンジンの構造も複雑になってしまいます。
そのため効率が悪くなるというデメリットもあるのです。
そのため、「250ccでは小さすぎて4気筒は難しいし、意味がない」と言われてきました。
そのような中、1983年にスズキから250cc4気筒のGS250FWが発売されます。
このバイクはデータ上では36馬力とRZやVTを上回っていましたが、エンジンの特性は穏やかで、車体も大柄で重かったのでいわゆるスポーティなバイクではありませんでした。
各メーカーが競いあっていた時代
それでも「世界初の量産250cc水冷4気筒」のインパクトは大きく、1985年にはヤマハもFZ250フェーザーを発売します。
スズキが2バルブだったのに対しこちらは4バルブに進化。
そしてこれはまさに回転で馬力を稼ぐ考え方のエンジンで、14,500回転という超高回転で45馬力を発生したのです。
なお、この45馬力という数値は国内メーカーの250ccの自主規制値とされ、この後のスポーツバイクの馬力はみんな横並びの45馬力になっていきます。
フェーザーに続いて、4サイクルを得意としたホンダもCBR250Fを発売。
以降この250cc4気筒というカテゴリーは各メーカーの激戦区となったのです。
バイクブームも下火に
1990年代に入るとバイクブームがやや落ち着きを見せます。
というよりも、バイクにとって長い低迷の時代に入ったといっていいでしょう。
加熱競争が落ち着いた面もあり、さらに行きすぎた高性能競争の反省もあったのか、1992年には250ccの馬力規制値が40馬力に引き下げられてしまいます。
そして2007年、排ガス規制の強化を機に、各メーカーとも250cc4気筒から撤退してしまうのです。
厳しい排ガス規制に適合させるのが難しいといった面があるでしょう。
250ccバイクということで価格面での折り合いも大切です。
もともとコストのかかる高度なエンジンだったこと、くわえてここまで突き詰めて馬力を求める必要性も薄くなったなどの理由があったのは間違いありません。
消滅から13年、ついにカワサキから4気筒が復活
以降10年以上の間、4気筒の250ccバイクは作られることはありませんでした。
もはや失われた技術などと言われてきたのです。
そのような中でもスポーティなバイクを模索するホンダは2気筒のCBR250RRで38馬力(2020年にマイナーチェンジして41馬力)のパワーを出しましたが、数値上ではかつての4気筒に及びませんでした。
そこに2020年、突如としてカワサキが発売したのがNinja ZX-25Rなのです。
実に13年ぶりに登場した国産250cc4気筒エンジンは、15,500回転でかつての馬力規制上限値と同じ45馬力を発生します。
果たして250ccのバイクに45馬力という出力が本当に必要なのかとか、そういう議論もあるでしょう。
しかし2007年の排ガス規制から13年、ついに250ccバイクのスペックが規制前に、さらにバイクブーム絶頂期の時代に並んだ、ということはバイク好きにとって大きな意味があったのは間違いありません。
また、今の時代に敢えて250cc4気筒を開発したカワサキの男気のようなものもファンにとっては嬉しいことなのではないでしょうか。
Ninja ZX-25Rは2020年9月10日に発売、当初は2021年3月末までに5000台の販売を目標にしていたところ、年末までにそれを上回る予約がありました。
現在においてもバックオーダーの状態だといいます。
かつてのバイクブームを支えた若者が子育てを終え、人生の後半にさしかかってリターンライダーとして戻ってきた現代。
それが、今のバイク業界を支えているとされています。
そこに、中高年のリターンライダーの子どもたちがそれに触発されてバイクの世界に入ってくる…。
そのような好循環に現在のバイク業界は支えられているといっていいでしょう。