メガスポーツの復権をかけてスズキの新型「ハヤブサ」の登場

2000年を迎えるころからバイクの世界では「時速300キロ」を夢見た時代がありました。

当時のメガスポーツバイクのスピードメーターはすでに300キロを超える表示がされていたのです。

各バイクメーカーが最速の称号を奪い合っていた時代です。

「そんなスピードが出るバイクもいいけど、どこで出すの?」なんて声も聞こえてきました。

最速を標榜する時代はいつのまにか終わりを告げましたが、メガスポーツバイクは健在です。

そうなると、現在のメガスポーツバイクには何が求められているのでしょうか。

ここでは新型「ハヤブサ」の過去モデルと比較しながら考えてみます。

ハヤブサのモデルチェンジは13年ぶり

SUZUKI Hayabusa

総排気量:1339cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:800mm
車両重量:264kg
発売日:2021年4月7日
税込価格
黒/金、白/青:215万6000円
銀/赤:216万7000円

欧州でいち早く新型ハヤブサの発表があり、そこからすぐに国内仕様の発表があったハヤブサ。

前回から実の13年ぶりのモデルチェンジです。

デビューは1999年ですから、ハヤブサの誕生から22年となります。

栄枯盛衰を繰り返すバイクの中でハヤブサもついに生産終了か…と思っていた矢先のモデルチェンジ。

世界中のハヤブサファンが歓喜したのは間違いないでしょう。

13年という期間、何も無かったのですから、する必要がないほど完成されたマシン…という見方と、開発終了=フェードアウト(生産終了)という見方もありました。

年々厳しくなる排ガス規制は、比較的余裕のあるメガスポーツの世界でもそれほど簡単なものではなかったのです。

それでもスズキはしっかりと応えてくれましたね。

他のライバルメーカーが頻繁に型番を変えて(中には消えて)いったことを考えると、ゆっくりと歴史を刻むハヤブサの存在はメガスポーツバイクの中でも稀有な存在といっていいでしょう。

スピードを競う時代からツーリングを楽しむ時代に

ハヤブサが誕生したときは、時代も21世紀を迎えようとしていた時代です。

どのバイクが300km/hを超えるんだ?なんて競い合っていた時代です。

ギラギラ輝いていた時代もそれはそれで良かったのですが、時代の変遷とともに、現在はツーリングの楽しさを実感する時代となってきました。

このような時代に、新型ハヤブサは確実に求められるバイクとなったのです。

そんな速くて重いバイクはいらないよ…そんな話も聞こえてきそうですが、逆に考えると「余裕の走り」ということですね。

長距離ツーリングにおいていかに疲れず目的地に着くことができるか。

そこはメガスポーツの真骨頂といっていいでしょう。

スピードも出せて疲れない重厚な走り、街中も素直で快適、高速に乗れば無双です。

スズキのフラッグシップバイク

初登場でいきなり世界最速の称号を受けたバイクです。

それ以来、スズキにとっては「力の象徴」といっていいでしょう。

そのハヤブサが2021年4月に大きくモデルチェンジしました。

特徴的なハヤブサのイメージを残しつつ大胆にエッジを効かせた印象です。

パワーはダウンしたが…

注目すべきはパワーのダウンサイジングです。

新型ハヤブサは10馬力近くダウンして188psとなりました。

これは、そこまでのハイパワーは必要ないというスズキの回答と捉えていいでしょう。

かといって、高速性能はまったく切り捨てられていません。

ハイパワーに頼ることなく高速性能を実現したのも、登場から20年間熟成した技術の賜であるのは間違いありません。

実際に多くの人のライディングインプレッションを見てみると、

電制ライディングアシスト機構群の進化に驚いたり…

ハンドリングの違いにビックリしたり…

乗り心地の良さにうっとりしたり…

そんな好意的な意見が圧倒的に多くなっているのです。

これでパワーダウン?

という人もいるかもしれませんが、そもそも、従来の300psを引き出せる走りをしたことのある人がいったい何人いたのか…ということですね。

サーキット走行でもしないかぎり一般の人には持て余すパワーであったのは間違いありません。

それは、今回のモデルチェンジでも変わりません。

多くの人が言っているのが、乗り心地と素直なハンドリングです。

高速道路までだと、100km/hまでの速度域となるのですが、どのような速度でも安定した乗り心地を提供してくれます。

たとえば都心の補修だらけの荒れた路面でもギャップを受け流していくれるのです。

サスペンションが秀逸なのは間違いないのですが、人間に例えると足のつま先だけでギャップを吸収してくれて乗り手に衝撃を伝えない感覚というのが一番近いかもしれません。

高速道路などでの100km/hの巡行は言うに及ばずで、まさに至福の乗り心地といっていいでしょう。

乗り心地ということでは一般道路を走ったほうがその安定性を体感できると思います。

メガスポーツの神髄は「余裕の走り」です。

そして、ひとたびアクセルを開けると極限の加速力を見せつけてくれます。

その場面はほとんどないと思いますが、一瞬の加速力といった点では瞬時にしてクルマを置き去りにできるポテンシャルということです。

価格は乗り出しで200万円…高いと言えば高いですが、昨今では軽自動車でも200万円超です。

何もかもが高くなっている時代で、これは仕方のないものかもしれません。



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